塩竈市の「副業型ワーケーション」仕掛け人に聞く--地元企業と副業人材をつなぐ想い - (page 2)

都会の喧噪から離れ「五感で感じて欲しい」

——今回、ワーケーションのバケーション部分をフェリーで渡って行く浦戸諸島を選ばれています。なぜ塩竈の観光名所ではなく島を選ばれたのでしょうか。

宮本氏 : ワーケーションは「ワーク」と「バケーション」の造語ですが、僕は英語があまり得意ではないこともあって「そもそもバケーションってなんだっけ?」と調べることからはじめました。調べてみると「休暇」と出てきたんです。観光ではないんですよね。じゃあどんな休暇をとってもらおうか、どんな体験をしてもらおうかと考えました。

有限会社宮本商店の宮本龍次さん
有限会社宮本商店の宮本龍次氏

——休暇をとってもらうための島だったんですね。

宮本氏 : そうですね。何が一番休暇になるかを自分の経験から思い返してみると、青森で体験した「デジタルデトックス」でした。青森に旅行に行った時に、電波が入らない場所で温泉につかって休んだことがあるんです。ストレス解消にもなって、旅行疲れもなくて、デジタルがない世界に感動しました。

 
 
浦戸諸島の寒風沢島での景色
浦戸諸島の寒風沢島での景色

 今回はワーケーションで来られるので電波はないといけないですが、都会の喧噪から離れて五感で色んなものを感じて欲しいと思いました。泊まっていただく寒風沢島はコンビニがなく、街灯も標識も少ない島です。島民の方にもなかなか出会わないくらい静かでのどかな場所。そういうところであれば、休暇になるだろうと思いました。それが浦戸諸島を選んだ理由です。


寒風沢島の民宿「外川屋」さん。
寒風沢島の民宿「外川屋」

 もちろん地域の文化や歴史を知ってもらうプログラムは用意しています。ほかにも、シーカヤックなども体験いただこうと思っていますが、コンテンツがメインではありません。ビジネスの話ではないところで、塩竈に暮らす人の人となりを感じていただいたり、塩竈のことを知ってもらったり、参加者同士のつながりをつくっていただいたりするきっかけになればいいなと思い、用意しました。

 今回のワーケーションを通して、浦戸を塩竈を「第2のふるさと」のように感じていただけたら嬉しいですね。

3年で「塩竈に根付く」ワーケーションにする

——今回のワーケーションでは参加者に3万円の給与が出ます。珍しい取り組みですね。

宮本氏 : 今回、参加者の皆さんは塩竈の事業者さんとディスカッションをしていただきます。副業につなげるためのマッチングではありますが、お互い初めて会うわけですし、いきなり副業ができるわけではありません。ですので、その分の給与として3万円をお渡ししています。

 ただ、普通に3万円をお渡しするのではなく「このお金を使って飲み食いしてください。使った分はどこでいくら使ったかあとで教えてください」とお願いしています。これは、最終的に塩竈にいくら落ちたのかを分析するためです。

 ワーケーションを通じて、地域の人とつながりができると、やっぱりそこでお金を使いたくなると思うんです。すでにワーケーションを通じた出会いがきっかけで、一度の買い物で1万円以上購入されている参加者もいますし、面白い分析結果になるのではないかと思います。

——ほかにも何か取り組まれていることはありますか。

宮本氏 : 参加者の皆さんにスマートウェアをつけてもらって、ストレス度を測っています。どういう結果が出るか本当にわからないのですが、平均的な数字を出してそれを地図上にピン留めをしたいと思っています。クリックすると、この場所ではこういう属性の人がこんな波形を示している、というのが分かるような。

 ワーケーションで来てもらっているので、ストレスが軽減されているほうが嬉しいですけど、ストレス度が高く出る場所があってもいいと思っています。実際に石段が202段ある鹽竈神社に登った参加者はストレス度が上がっていました。ストレスというより202段を登るきつさでストレス度が上がっているのですが、これもひとつの指標としてみれば面白いなと。

 
 

——今後も副業型ワーケーションは開催されますか。

宮本氏 : 塩竈の副業型ワーケーションは3カ年で計画を立てています。1年目の今回がテストマーケティング。2年目がモニターツアーで、3年目がパッケージとして完成したもので募集をする予定です。

 今回のテストマーケティングで、参加者からも塩竈の事業者さんからも課題が出てくると思いますし、今後続けるための費用感も把握できます。副業が生まれた際のワーケーション費用をどこまでを県や市が負担して、どこからを事業者さんに出してもらうかなどの課題もありますが、参加者の皆さんがこういった課題について自主的に話し合ってくださっているんです。

 これまで塩竈に訪れたことなかった皆さんが、真剣に話し合っている姿を見ていると、われわれだけで考えるのではなく、今回ご縁のできた参加者の皆さんを巻き込んで、一緒に今後のワーケーションについて考えていきたいなと思いました。

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