歴史を変えていたかもしれない--M・デル氏が明かしたS・ジョブズ氏との過去 - (page 3)

Connie Guglielmo (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2021年10月12日 07時30分

 AppleがNeXTを4億2900万ドルで買収したのち、Jobs氏は1997年、窮地に陥っていたAppleに復帰し、Dell氏に別の事業提案を持ちかけた。Jobs氏とそのチームは、NeXTの「Mach」OSをベースとするMacソフトウェアを移植し、DellのPCを動かすIntelのx86チップ上で実行できるようにした。Jobs氏は、DellにMac OSのライセンスを供与することを提案し、PCの購入者がAppleのソフトウェアとMicrosoftのWindows OSのどちらを自分のマシンにインストールするか選べるようにしてもいいとDell氏に伝えた。

iMacを発表するJobs氏
提携についてDell氏を説得しそこなってから、Jobs氏は1998年のカラフルな「iMac」などの新型コンピューターを発表した
提供:John G. Mabanglo/Getty Images

 「Steveは、『これを見てほしい。これはDellのデスクトップだが、Mac OSが実行されている』と言った」と振り返るDell氏。「『Mac OSのライセンスを取得してみてはどうか』」

 Dell氏は、そのアイデアを気に入り、Mac OSを搭載したPCが売れるたびにライセンス料を支払うとJobs氏に伝えた。しかし、Jobs氏には、別の考えがあった。Dellのコンピューターの方が低価格であるため、そのようなライセンス計画では、Apple自体のMacの売り上げが損なわれてしまうのではないか、と心配していたからだ。Dell氏によると、Jobs氏は代案として、DellのすべてのPCにMac OSとWindowsの両方を搭載して、顧客がどちらのソフトウェアを使用するかを選べるようにし、販売されたDellのすべてのPCについて、DellがAppleにライセンス料を支払う形を提案した。

 Dell氏は笑みを浮かべながら、そのエピソードのことを語り、Jobs氏がそのような提案を試みたのは理解できるが、PC購入者がMac OSを使わなくても、DellはAppleに多額のライセンス料を支払わなければならないため、「採算面を考えると、それほど妥当な提案」ではなかった、と振り返る。問題は他にもあった。Jobs氏は3年後、4年後、5年後でもMac OSを利用できることを保証しようとしなかった。そのため、Mac OSが進化する中で、同OSを使用するDellの顧客が置き去りにされてしまうおそれがあった。

 それでも、この交渉は、もし実現していたらどうなっていただろうかと想像してしまう歴史の瞬間だったとDell氏は認めている。

 「実現していたら、PCにおけるWindowsとMac OSの道は変わっていたかもしれない」とDell氏。「しかし、両OSが別々の方向に進んだのは、ご承知のとおりだ」

 そのように別々の方向に進んだことで、Jobs氏はNeXTから着想を得たMac OSを進化させ続け、Mac製品ラインを再編成した。例えば、1998年半ばには、キャンディーカラーの「iMac」を追加している。Jobs氏は、2001年10月に音楽プレーヤーの「iPod」を発表し、2007年1月にはiPhoneを披露。この動きにより、同社の家電市場への進出は確固たるものになった。iPhoneが発表された日に、Apple Computer Inc.は社名をApple Inc.に変更した。その3年後には、iPadも登場している。

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