2011年10月に筆者は、不覚にもMichael Dell氏を怒らせてしまった。
それはSteve Jobs氏が死去して間もない頃のことで、筆者はテキサス州ラウンドロックにあるDellの本社でDell氏に30分間のインタビューをした。当時、筆者はDow Jonesの記者だった。
インタビューがほとんど終わってDell氏がドアに向かいかけた時、筆者は「あなたがSteve Jobs氏や、彼がいたころのAppleから学んだことで、何かDellに生かせることはあるか」と質問した。
Dell氏は慎重に間を置くと、Jobs氏には大学生のころに出会い、強い印象を受けたと言った。筆者は、それは素晴らしいことだが、現在はどうかと聞いた。Dell氏は何らかの形でAppleを見習おうとしているのだろうか。あるいはAppleの変革から何か洞察を得ているだろうか。
Dell氏がその質問を気に入らなかったのは明らかだった。一瞬立ち止まり、苦い顔をすると「対談はこれで終わりだ」と言い、部屋から出て行ってしまった。
筆者はその質問への答えを今でも待っている。今ならDell氏も答えられるかもしれない。Dellは非公開企業になり、一般投資家の要望や、ウォール街の監視から解放されたからだ。
筆者がその質問をしたのは、Dellにとって明らかに形勢が逆転していたからだ。ドットコム景気の間、DellはPC市場のトップにいたが、Appleは死にかけたところから復活しようとまだ苦労していた。Michael Dell氏が1997年後半に、当時不振に陥っていたAppleにできることは「会社を畳んで、金を株主に返すこと」だけだと皮肉な発言をしたのは有名な話だ。
Dellの窮状を、他人の不幸を喜ぶとどうなるかを示す面白い話だと言ってしまうのは簡単だが、同社は、1990年代半ばのAppleのような、瀬戸際に立たされた大企業というわけではない。Dellの第3会計四半期の純利益は、前年同期から47%減の4億7500万ドルで、売上高は11%減の137億ドルだったが、11月2日までの期間で、依然として事業から13億ドルのキャッシュフローを生み出している。それによって同社の現金および投資総額は142億ドルになっている。
要するに、グラスにはまだ半分も水が残っている。Dellは今でも世界最大のPCメーカーの1つだ。ただし市場シェアの面では、Lenovoのようなアジアのライバル企業に負けている。DellはIBMを見習って、ストレージやサービスのようなビジネステクノロジによって拡大しようとしているが、そうした事業が結果を出すスピードは、投資家にとっては十分ではない。
一方スマートフォンやタブレットのような高成長市場では、Dellの取り組みは控えめに言って期待はずれだ。同社は、低成長あるいは成長のない市場で売り上げを減らすという、憂慮すべき未来へと向かいつつある。
では、かつての巨大企業で、今もなお大きな企業を復活させるにはどうすればよいだろうか。Dellは最終的に、そのための一番良い方法はカーテンの後ろに隠れていると判断した。Michael Dell氏と投資会社のSilver Lakeは米国時間2月5日に、244億ドルのレバレッジドバイアウト(LBO)で協力し、Microsoftがこの取引への資金協力として、20億ドルを融資すると発表した。
株式非公開化は、現時点では顧客を不安にするかもしれないが、正しい行動だ。同社は、あらゆる行動を規制当局や一般投資家に公表することなしに、必要とされることを行える。例えば、エンタープライズビジネスを成長させ、モバイルでは何ができるかを考え出すことができる。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」