Appleは2020年、同社の主力コンピュータ「Mac」に、独自設計のApple Silicon「M1」を搭載して刷新した。
最も廉価で人気のあるモバイルノート「MacBook Air」の性能は5倍程度引き上げられ、最上位モデルのMacBook Pro 16インチに到達、メモリ8GBモデルで4Kはおろか8Kの映像まで編集できるほどの性能になった。
2016年頃から、当時採用していたIntelのCPUについて、Appleが求める性能と省電力性のバランスが採れたチップの調達に悩んでおり、一方で性能が次々に向上するiPhone・iPadを見た顧客からは「Mac軽視」の批判を浴びる結果となった。
Apple Silicon採用はその問題解決として、最良の結果を得ている、と評価できる。ただし、M1がIntelチップに完全に勝っているとは言えない。
確かに省電力性についてはiPhone譲りの「サボる技術」がふんだんに使われ、その常識をコンピュータに持ち込んだ点が画期的だった。M1が汎用的にその性能を発揮するかと言われると、得手不得手があるように感じられる。たとえばビデオ編集を行う場合、さまざまなアクセラレータや画像処理エンジンが備わっており、プロセッサ本来の性能を補っているからだ。
もちろんユーザーからすれば、良く使う機能が高速かつ省電力に動けば満足だし、Appleはそうした現実的、体験的に高性能であると感想を持つことを選んでいる。それが必ずしもプロセッサそのものの性能評価につながるわけではない点は、理解しておく必要がある。
その上で、AppleはApple Siliconをどのように進化させようとしているのだろうか。
その鍵となる求人情報が報じられている。「RISC-V」と言われるプロセッサ技術のプログラマーを募集しているというのだ。
RISC-Vはカリフォルニア大学バークレー校でボランティアの貢献も集めて開発され、32ビット、64ビット、さらに128ビットまで用意されている。そして最大の特筆すべきポイントは、命令セットアーキテクチャ(ISA)が、使用料がかからないオープンライセンスで提供されている。
現在AppleがM1やA14 Bionic等で採用しているのはARM V8.6Aと言われる命令セットを用いる独自のチップだ。このARMは、ご存じの通り、ソフトバンクからNVIDIAが買収を発表している。
ARMについてはオープンアーキテクチャではないため、Appleはライセンス使用料を支払う必要がある。またIntelからチップを調達していたときほど影響は受けにくいが、ARMの発展にApple Silicon強化のスピードや方向性が制限を受ける可能性も将来考えられる。
これらの点から、Appleがよりオープンなチップ開発の環境を手に入れようと動くことに大きな驚きはなく、今回報じられたRISC-Vも、将来のApple Siliconが採用するアーキテクチャの1つの候補になり得る。
アップル、Arm技術と競合する「RISC-V」のプログラマーを募集(9/6)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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