これまでショールームを展開する急速冷凍機について聞いてきたが、凍結はあくまでも1つの工程に過ぎない。
「食材をおいしく凍結させるためには、前処理、凍結、保管、解凍まで4つの組み合わせを最適化する必要があります。もっと大きく言うと、食材の選定から冷凍に合うものが必要になるので、5つの変数を組み合わせることになります。なので、凍結はあくまでもその1つというのが最近のわれわれとしての考えです」(春日氏)
特に今後重要な鍵を握るのが「解凍」という。
「解凍も電子レンジでするのか、常温で解凍するのか、流水か、冷蔵庫で解凍するかによって仕上がりが異なります。たとえば寿司の場合、シャリとネタで違うので、いろいろな考え方がある。そこまで含めてトータルでコンサルティングしないと、凍結するだけではうまくいかないのです」(春日氏)
解凍処理のオペレーションも重要だ。「学生アルバイトと熟練の方、丁寧なパートさんなど、人によってできが違ってくる場合もあります。なので、今後はおそらく『解凍機』がキーワードになると思います」(春日氏)
現在、デイブレイクでも解凍機を取り扱っているが、魚と肉が得意なのは冷凍機と同じ。野菜やフルーツなどはまだなかなか難しいのが現状で、解凍機についてはもっと研究しなければいけないと説明した。
急速冷凍技術は「食材の劣化」と「食品ロス」を防ぐ鍵となる技術であることは確かなのだが、食品ロスについては完全に防げるものではないと春日氏は指摘する。
「冷凍すればロスにならないというのは半分合っているのですが、お客様に出すために前日から解凍しなければならないものもあります。再冷凍すると品質が落ちるので、解凍したものは出さないといけません。ですから、ゼロになるわけではないのです」(春日氏)
農林水産省・環境省の推計によると、2017年の食品ロスは約612万トンで、そのうち事業系が328万トンを占める。
「事業系の食品ロス328万トンのうち、約7割が果物と野菜で占められているのです。そこにはそもそも流通に乗らない規格外ロスも多くあります。そういうものをどう流通させるか。凍らせるところまではできますが、その売り先をどう作るかまで考えないと、凍らせるだけになってしまいます」(春日氏)
従来の流通には乗らなかった果物でも、フローズンカットフルーツなどにすれば、スムージーの材料として流通に乗せられる。
「サステナブルやCSV(共通価値の創造)などの考え方でいくと、『凍らせてロスを削減する』という話まではいいのですが、その販路や売り先、市場をどう作るかまで考える必要があります。デイブレイクとして考えているのは、作り手が作ったものを食べ手のところまで届けるというミッションです。作り手は機械で増やせますし、おいしい高品質冷凍食材はコンサルティングによって増やせます。そこからどうビジネスにし、持続する形にしていくかが、われわれが今考えないといけないところだと思っています」(春日氏)
飲食店の中にも、サステナブルな食材を使っているといった世界観で食品やメニューを出したいという声が大きくなっているという。
「これからは『何かサステナブルな食材はないか』とか、海外の方が『メイドインジャパンのおいしい加工済みの冷凍食材はないか』と考えたとき、デイブレイクが業務用の窓口になっていきたいというのが次の野望です」(春日氏)
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