周囲のまったく見えない仮想現実(VR)ゴーグルを装着すると、現実空間から完全に切り離された状態でVR空間を体験できるため、非常に高い没入感が得られる。ただし、ある程度以上の範囲を動き回るタイプのVRゲームなどだと、部屋の壁や置いてある物にぶつかって危険だ。そのため、AppleやMicrosoft、Googleは、部屋のなかでも安全にVRゴーグルで楽しめる技術を提案している。
これに対し、Microsoftは現実空間の情報をVR空間へ反映させることで問題解決する技術を考案。この技術を、傘下の特許管理会社Microsoft Technology Licensing(MTL)経由で米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間5月18日に「TRANSITIONING INTO A VR ENVIRONMENT AND WARNING HMD USERS OF REAL-WORLD PHYSICAL OBSTACLES」(特許番号「US 11,009,716 B2」)として登録された。出願日は2020年4月1日、公開日は2020年7月16日(公開特許番号「US 2020/0225495 A1」)。
この特許は、VRゴーグルを使用するコンピューターシステムにおいて、ゴーグル装着者にVR空間の映像だけでなく、現実空間の映像を適宜見せる技術を説明したもの。通常はVR空間の映像だけを見せるが、VR映像を見せ始めるタイミングや、周辺の障害物に近づいた場合に現実世界の映像を見せることで、事故などを未然に防ぐ。
たとえば、VRゴーグルを装着していきなりVR空間の映像を見せると、装着者は現実空間との切り替えが唐突で戸惑うそうだ。そこで、この特許では、まずカメラなどで捉えた現実空間の映像を見せ、続いて現実映像をテクスチャーなどで表現したシンプルな映像へ変え、その後で最終的なVR空間の映像へ切り替える、という手順で制御する。このように映像を遷移させると、ゴーグル装着者は自然にVR空間へ移行できるという。
また、VRゴーグル装着者が部屋の壁や置いている物にぶつかりそうなら、映像をVR空間から現実空間に切り替え、注意を促す。状況によっては、VR空間の映像に現実空間の簡素化した映像を重ねる、という処理も可能だ。ゴーグル装着者が見る方向を変えたり、移動したりすると、必要に応じて現実空間の映像を見せて衝突を防ぐ。
装着者が静止している場合でも、ペットの犬が近づくなどするとその現実映像を見せる、というアイデアにも言及している。
なお、特許とは、技術的アイデアの権利保護を目的とした公的文書である。登録されて成立しても、実際の製品やサービスで利用されるとは限らない。さらに、アイデアの存在を公知の事実にする目的で出願され、登録に至らず公開止まりになるものも少なくない。
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