今から10年前の2011年5月11日、最初の「Chromebook」が発表されたときに、多くを期待した人は誰もいなかった。何しろ、Chromebookはネットブック時代の直後に登場したからだ。当時、低価格かつ低消費電力のノートPCが、高額なテクノロジーに代わる万能薬だと最初はみなされたが、その限られた機能が過剰に宣伝されていたにすぎなかった。当時の筆者は、「Windows」とIntelの「Atom」を搭載するネットブックで何か有用なことができないかと数年間苦戦してきたので、初期状態でネットブックよりも制約が多いように思えるPCプラットフォームについて、楽観的にはなれなかったのだ。
Chromebookに先だって発表された「Chrome OS」は、当時の筆者にはOSのようには思えなかった。基本的に、Chrome OSはすでに広く使用されていた「Chrome」ウェブブラウザーと同じであり、Chromebookはそれにキーボードとスクリーンを追加したものだった。同プラットフォームには、ソフトウェアをインストールして実行する機能が明らかに欠けていた。本質的にブラウザーであるOSが搭載されたコンピューターを誰が欲しいと思うだろうか。
それから10年が経過した今、手頃な価格のノートPCというGoogleのコンセプトは健在で、成功を収めている。新型コロナウイルスによる危機の中、Chromebookは、在宅学習や在宅勤務をしなければならなくなった人々のつながりを支えた。Chromebookは時代を先取りしていたようだ。そして、パンデミックが発生したことで、その潜在的な可能性が最大限に発揮された。
最初のChromebookのモデルは、今から10年前の2011年5月11日、サンフランシスコで開催の「Google I/O」カンファレンスで発表された。その中には、サムスンとAcerのモデルがあり、両社はChromebook市場で今も主要な地位を占めている。当時、米CNETのMaggie Reardon記者は以下のように書いている。
サムスンとAcerがそれぞれ、6月15日にChromebookを発売する。サムスンのChromebookは、Wi-Fiのみの対応版で429ドル、3G版で499ドル。AcerのWi-Fiのみに対応するChromebookは349ドルだ。
驚くべきことに、10年後の今でも、エントリーレベルのChromebookの多くは350ドル~450ドルで販売されており、Chromebookは、この10年で価格がそれほど上昇していない数少ないテクノロジー製品の1つになっている。
筆者は、低価格のノートPCとデスクトップを長年支持してきた者として、自分のニーズに対し無駄に高性能なコンピューターを購入する人が多い、とよく言っている。主なニーズが基本的なウェブ閲覧やオンラインショッピング、ソーシャルメディア、電子メール、動画視聴である場合は、特にそうだ。ウェブブラウザーだけで日常生活が完結するというのは、今でこそ理解できる話だが、クラウドベースのソフトウェアツールが少なかった2011年に、そのようなアイデアは受け入れられ難かった。そして、そう思ったのは筆者だけではない。先述したReardon記者の同じ記事には、以下の記述がある。
GartnerのアナリストMichael Gartenberg氏は、ほとんど同じ価格でより高性能で柔軟性の高い競合製品が提供されていることを考えると、ブラウザーがChromeに限られているという点が主要な要素かもしれないと述べた。「非常に興味深い」と同氏は述べ、「しかし、この価格で消費者は購入するだろうか。499ドル出せば、かなり高性能なネットブックや、『iPad』さえ購入することができる」と語った。
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