LG Electronicsがスマートフォン市場から撤退することは、それほど驚くべきことではない。だが、長年LGのデバイスを使い、同社のスマートフォン業界への貢献を評価してきたわれわれにとっては少し寂しいことだ。LGは多数の革新を起こし、それに値する尊敬を得ることはできなかったが、これらの革新の多くは業界の基準になり、スマートフォン市場への影響は、同社が去った後も残るだろう。
LGはハードウェアの革新を大胆に進め、時にはなぜそのような決断を下したのか疑問に思わせることもあった。だが、ほとんどのスマートフォンがガラスとプラスチックで出来た板状だった時代に、LGのユニークな形のデバイスやクールな技術を試すのは楽しいことだった。
私が初めてLGのスマートフォンを使ったのは2012年のことで、モデルは「Google Nexus 4」だった。2014年の「LG G3」からは、すべてのGシリーズとVシリーズを試してきた。歴代で最もお気に入りだったのは背面が茶色いなめし革だった「LG G4」だ。だが、思い出に浸るのではなく、LGがスマートフォンの世界にもたらした革新を見ていこう。
静電容量式タッチスクリーンと言えば、ほとんどの人はAppleが初代iPhoneで採用した技術だと思っているだろう。だが、LGは2006年発売の「The PRADA Phone by LG」でAppleの先を越していたのだ。
The PRADA Phone by LGは、解像度400×240ピクセルで3インチの静電容量式ディスプレイを備えていた。当時としてはかなりまともなカメラも搭載していたが、米国での販売価格が849ドルと高額だったため、人気は出なかった。
LGは、湾曲した有機ELディスプレイを備える「G Flex」を米国などで発売した。縦方向に緩やかに湾曲しており、通話するために顔の近くに持っていくと、顔のラインにフィットした。ディスプレイは当時としては非常に大きい6インチで、「ファブレット」に近いものだった。
当時の競合製品としては、例えば優れた「S Pen」体験を提供し、G Flexよりも小型の「Samsung Galaxy Note 3」などがあった。今日のフレキシブルディスプレイを備えた折りたたみ式スマートフォンがあるのは、LGが先鞭をつけてくれたお陰だと感謝したい。
「LG G5」が発売された際、機能強化のために多様な周辺機器をスライドするだけで脱着できるモジュラー式スマートフォンというアイデアは良さそうに聞こえた。だが、モジュールとして発表されたのはバッテリー、DC-ACコンバーター、カメラグリップのみだった。サードパーティーからモジュールが登場することはなく、G5は市場にうまく受け入れられなかった。
LG G5のモジュラー式というアイデアは普及しなかったが、このモデルの背面には超広角カメラが搭載されていた。超広角カメラは、背面に複数のカメラを搭載するその後のミッドレンジ以上のスマートフォンの基準になった。LGがこの基準をつくり、この革新はLGがスマートフォン市場を離れた後も最も長く続くものになるかもしれない。
LGはまた、「LG V10」(2015年)に2台の前面カメラを搭載した。スマートフォンの前面に2台のカメラを搭載した最初期のモデルの1つだ。
LGのVシリーズは、コンテンツクリエイターとオーディオファン層をターゲットとしていた。2016年発売の「LG V20」は、高品質音声再生用に統合されたクアッドDACを備えていた。誰もが認めていたわけではないが、LG V20のサウンドを気に入っていたオーディオファンは多い。
LGは、ほぼ最後まで3.5mmのヘッドホンジャックを提供し続けた。他のほとんどのメーカーより1~2年長かった。
競合他社が折りたたみ式スマートフォンに取り組んでいる間、LGは「LG DualScreen」カバーというシンプルなソリューションを使うことで、はるかに手頃な価格で2画面スマートフォンを実現した。このソリューションはまず、「LG G8X」のオプションとして登場し、V50とV60 にも引き継がれた。「LG VELVET」でもDualScreenカバーを使える。このソリューションの優れた点は、必要に応じて2画面で使ったり、本体をカバーから取り外して簡単に普通のスマートフォンとして使ったりできることだ。
この2画面ソリューションは支持を得ており、「LG V60」は2画面に加え、スタイラスが使える究極の体験を提供する。LG V60は本当に現在最高のスマートフォンの1つなので、私はこれから何年もLG V60を使い続けるつもりだ。
ディスプレイが90度回転してT字型になるというユニークな「LG WING」を試すのは楽しかった。だが、ジンバルモードで動画を撮影する以外に、このデザインの実用的な使い方を見つけるのに苦労した。下層の小さなディスプレイはあまり役に立たず、このスマートフォンの魅力は限られていた。
これは、LGがスマートフォン製品としてテクノロジーを示した明確な例だったが、社会にとって多くの苦難があったこの1年、われわれにはこうしたフォームファクターを受け入れる準備ができていなかった。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス