ハーバード・ロー・スクールで労働およびワークライフ研究プログラムの特別研究員を務めるVivek Wadhwa氏は、Zoomを通じて頻繁にテレビに出演している。あるときWadhwa氏は、インタビュー前に急いでシャツを着替えなければならなかった。ところが、カメラがオンになっていることに気づかないまま着替えてしまった。幸いにも、その様子は放映されずに済んだが、間一髪のところで、まさに「悪夢が現実」になるところだったという。
悪夢とは、Wadhwa氏によるとこういうことだ。「誰でも、『大学の夢』とか『試験の夢』を見たことがあるだろう。授業に遅れるとか、試験を受け損ねる、教室が見つからない、違う教科を勉強していた、そういう夢だ。新たな『大学の夢』は、着替えを忘れてパジャマのままZoomに出てしまうというものだ」
Caroline Joさんは、カリフォルニア州オレンジ郡に住むブランドマーケターだ。コロナ禍が始まったばかりの頃は、ビデオ会議のたびに服を着替え、化粧もしたうえでZoomのフィルター機能を細かく設定していた。だが、時間がたつにつれて、ビデオ会議に費やすエネルギーがなくなっていった。気づいてみると、ストレスに悩まされ、ビデオ会議がいくつもある日の前夜などは眠れないようになっていたという。
「私はマーケターで、マーケターというと一般的には、快活で率直にものを言う人種というイメージが強い。私は逆にとても内向的で引っ込み思案な性格だが、その性格も仕事のうえでは役に立っていると考えている。でも、Zoomでのミーティングということになると、ごく基本的なことまで不安になってくる。沈黙があれば気まずいし、次は誰が口を開くかと考えなければならない。常に注意が必要で、世間話も欠かせないし、音声などの技術的な問題もある。勇気を出して声を出したら、ずっとミュートになっていたということもある」、とJoさんは話している。
こうしたストレスの要因が、仕事以外で生じることもある。Kristen Taylor Huntさんは、ケンタッキー州ルイビル在住のアーティストで、かかりつけのセラピストの診療がビデオ会議方式に代わってから、それを避けるようになったという。「実際に何が起こっているか、何を言われているかに集中できないことが多い。自分の反応がちゃんとして見えるかどうか心配だし、自分が話を真剣に聞いていないように思われないかと気になる。退屈そうに、あるいは怒っているように見えているかもしれないから」というのだ。複数の自己免疫疾患がある者として、「新型コロナウイルスは私の精神衛生に大きく影響しているので、本当はセラピーに参加するべきなのだが」(Taylor Huntさん)
ソーシャルネットワークの動画チャットも、ストレスにつながることがある。友人たちと直接顔を合わせるときは、動画チャットのときほど「社交的な振る舞い」を求められるプレッシャーは感じない。ノーザンイリノイ大学でカウンセリング・高等教育学部の教授および学部長を務めるSuzanne Degges-White氏が、心理学雑誌Psychology Todayのコラムでそう指摘している。直接顔を合わせている場合は、同じ空間にいるだけで友情とサポートを示すのに十分だが、ビデオでは、常に話し続け、相手を楽しませなければならないと感じてしまう傾向が強くなる。そうしないと、ただカメラの前で笑っているだけになってしまうからだ。
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