1月上旬の米連邦議会議事堂への乱入事件後、保守派に人気の代替SNS「Parler」をApple、Amazon、Googleがサービスから締め出した。Parlerのユーザーはこれを受け、フォロワーに対してメッセージングアプリ「Telegram」への参加を推奨した。
そして、フォロワーたちはそれに従った。
およそ1万6000人のメンバーを擁する、Telegramのある公開チャットルームで、Miguelと名乗るユーザーがDonald Trump米大統領の支持者に向けて、首都ワシントンを再訪すべきだと訴えた。11月の大統領選挙の結果は盗まれたものだという根拠のない主張を届けるためだ。このユーザーは「Parler Lifeboat」(パーラーの救命ボート)というチャットルームに「すべての愛国者は不正選挙に抗議するために、1月21日にホワイトハウスに集まろう」と投稿した。21日は大統領就任式の翌日だ。数分後、Michelleと名乗る別のユーザーが「これはやらせだ」とTrump氏支持者に注意を呼び掛けた。
これは、熱狂的なTrump氏支持者の間で起きている陰謀論の衝突の一例だ。一部のネットウォッチャーは、陰謀論「QAnon」が多数の支持者を同氏の集会に集まるよう促してはいるが、これは保守派の信用を傷つけるために仕掛けられた「心理戦」だとしている。この陰謀論では、Trump氏が悪魔のような性的人身売買業者と戦っていると信じられている。大統領選の結果に反対する人々は、緩く組織化された反ファシスト運動antifaが仕掛けた罠にかかったのだと言う保守派もいる。
選挙結果が歪められたという証明できない主張は、比較的よくあるものだ。
だが、大小のSNS上に登場したこの誤った考えは、5人の死者を出した議事堂襲撃の後、暗号化メッセージングアプリに場を移した。より小規模な非公開のメッセージンググループに移行した結果、オンラインでの主張の衝突と右翼グループのさらなる分裂が発生した。オンラインの陰謀論では、6日の暴動の背後にはantifaがいることになっている。この暴動は、Trump氏がワシントンでの支持者集会で自身の支持者をたきつけた後に発生したものだ。
ワシントン大学情報学大学院で虚偽情報を研究する博士研究員、Rachel Moran氏は「抗議などの活動を支持するTrump氏「公認の」イベントがないため、同氏の支持者たちは、新大統領就任式前後に計画されたイベントの背後にいるのが本当は誰なのか確信を持てずにいる」と語った。
だが、FacebookやTwitterを含むSNSは、法執行機関や公民権団体とともに、Joe Biden次期大統領の1月20日の就任式までに、さらなる暴力が増える可能性があると警戒している。Facebookは同社のプラットフォーム以外のネット上で共有されている抗議運動への参加を促すチラシを追跡し、Facebook、Instagram、Facebook Messenger上に表示されると削除していると報じられた。
Trump氏は13日、Twitterに投稿した動画で「私の本当の支持者なら政治的暴力を支持するはずはない」と語り、議事堂攻撃から距離を置こうとした。だが、法執行機関は暴力の可能性を警戒しており、ワシントンに2万人の州兵を配備したと報じられた。米連邦捜査局(FBI)は内部報告で、50の州都すべてとワシントンの議事堂で「武装抗議」が計画されているという情報を受け取ったと報じられている。
SNS上の匿名の発言の中には、Trump氏支持者による新たな抗議運動は、実際にはantifaあるいは民主党支持者によって組織されているという主張もある。Facebook、Twitter、Parlerなどのオンラインフォーラムやメッセージングアプリに投稿されたあるチラシは、1月17日に午後に議事堂とすべての州都で行われる武装行進への参加を呼び掛けていた。このチラシは赤地に黄色い文字で「民主主義が破壊される時、沈黙するなかれ」と書かれ、自由の女神像が添えられている。
チラシのドラマチックな表現と力強い画像にもかかわらず、この新たなイベント関わらないよう注意を促すTrump氏支持者もいた。Trump氏支持者によるFacebookグループ「True Conservatives for Donald Trump 2020」で、あるユーザーは「愛国心を暴力に変えさせようとする共産主義的なチラシだ。われわれはどこの議事堂でも武装行進を行う計画は立てていない」と書いた。
別のFacebookユーザーはドキュメンタリー映画監督Michael Moore氏のコメントを引用してこのイベントを非難し、「テロリストの攻撃は終わっていない」として、議事堂を襲撃した暴徒が「さらなる攻撃を計画している」と述べた。反政府極右団体の報道プラットフォームを自認する「Tree of Liberty」はウェブサイトで、首都でのこの武装行進は中止され、6日の暴動を再現しようとするものではなかったと伝えた。Tree of Libertyは、この武力行進を企画してはいないと述べ、情報源については匿名の「イベント広報担当者」とした。
だが、13日の朝からオフラインになっているTree of Libertyのウェブサイトには、州の議会議事堂として特定した住所一覧が掲載されていた。少なくともその中の1件は誤ったものだった(同サイトがアラスカ州の議事堂として掲載していた住所はアンカレッジのショッピングモールのものだった。アラスカの州都はジュノーだ)。Tree of Libertyにコメントを求めたが、回答は得られなかった。
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