日本企業が目指す食のパーソナライゼーション--実現する上で必要なこと - (page 3)

個人情報の取り扱いと同意の取り方がカギ

 食のパーソナライゼーションを実現する上で重要になるのが個人情報の取得と管理だ。一般消費者にとって年齢や性別、食の嗜好、アレルギー情報、さらにはバイタルデータまでさまざまな情報を提供することで、その人にぴったりな食事や健康を増進できる食事を提案してくれるというメリットを享受できる。しかし一方で、インターネット上のサービスに個人情報を提供することに対して拒絶反応を示す人も少なくない。

 約1年にわたって個人向けにサービスを提供しているCAN EATの田ヶ原氏は、安心感と利便性などのバランス感が必要だという。

 「このプロジェクトは情報銀行系のものとからみが強いためプライバシーマークを取った。生活者の同意はとても大事だが、あまりたくさんやり過ぎると“同意疲れ”を起こしてしまい、本来体験してほしいサービスに届く前に離脱してしまうのではないかと思う。また、同意事項の文体も硬すぎるとダマされているのではと思われる感じもあるので、そこのバランス感も必要だ。特にわれわれはアレルギー情報や宗教信条などに関する個人情報を、制限食を出す人に見てほしいというのが前提のサービスなので、この人に公開する、この人にはしないといったオン・オフ機能を付けている。つねに自分の情報の公開範囲を知り、必要ないところには伏せていくというのが、情報取り扱いの点ではいいのかなと今の時点では思っている」(田ヶ原氏)

 プラットフォームを提供する側のNTTデータ三竹氏も、個人情報の取り扱いの難しさについて語る。

 「本人がどこのアプリやサイト、事業者にどこまで開示するか、第三者開示をどこまでOKするかなど、よく分からないながら何となく同意しているような中で、しっかり分かりやすく消費者の同意を取っていくという取り組みが進んでいる。たとえば米国は個人情報について比較的自由度が高かったが、カリフォルニア州では消費者のオプトアウトについて法律で定めていこうと進められている。逆に欧州はGDPR(EU一般データ保護規則)を作って、データは個人のものだと戻している状況だ。しかしそうするとデータ活用が進まないため、もっと活用しようという揺り戻しの動きが出ている。日本が進もうとしているのは欧米の間くらいなので、個人情報銀行のスキームが世界的にもそちらに寄っていくような可能性もある。そうすると、パーソナライゼーションの取り組み、個人情報の取り扱いについて日本から世界に発信できるサービスができる可能性はあると思う」(三竹氏)

 健康データプラットフォームなどで各社のアプリケーションが連携するとなると、そうした枠組みは必須だ。

 「そうしたことに取り組もうとすると、同意管理や情報銀行などのスキームが必要だ。今の状況で一つひとつ難しい調整をしながら消費者の同意を得て進めていくのは難しい。2020年に改正個人情報保護法が公布され、2021年には全面施行される。こうした法改正の動きがきっかけになって、理想としているような情報連携も進めやすくなると思う」(三竹氏)

 個人情報の取り扱いについては、ウェルナスでも細心の注意を払っているという。

 「個人情報の取り扱いはかなり気を遣っているが、そこからどうレコメンドするのか、どこまでレコメンドしていいのかについても重要だ。あくまで普段の食事を提案するのであって医療行為ではないので、どこまで踏み込んでいいのか。ユーザーもどこまでを求めているのかというのを、国の法的な部分と利用者の声、提供者側の責任の3つをよく考えて提供しないと、ちぐはぐになってしまったり、過剰なことを言ってしまったりすることになるため、そこは課題だと考えている」(小山氏)

 データを厳格に取り扱うための動きが進んでいる一方で、データ入力を簡略化するフリクションレスの動きはどのようになっているのだろうか。

 三竹氏は、「スマートミラーのようなもののほか、最近ではウエアラブル端末を付けるだけで食事履歴データが取れるといったものや、カプセルを飲むだけで腸内環境が簡易的に分かるといったものを手がけるスタートアップも出ている。新しいデバイスがどんどん出ているので、それらをいかに取りこむのかが重要だ。一方で、たとえばアレルギー情報を一生懸命登録しても、特定のお店にしか伝わらなければ、消費者は毎回伝えなければならない。1回入力したものをほかのプレーヤーにいかに知ってもらうかというデータプラットフォームを作るのも、一つのフリクションレスの取り組みだと思う」と語った。

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