2020年12月16日から18日までの3日間、「食&料理×サイエンス・テクノロジー」をテーマとしたイベント「Smart Kitchen Summit Japan 2020(SKS Japan 2020)」が開催された。今回で4回目となるSmart Kitchen Summit Japanだが、新型コロナウイルス禍とあって初のオンライン開催となった。
12月17日に開催された「日本企業が目指す食のパーソナライゼーション」というセッションでは、アレルギー対応やAIを使ってその人に合った食事を提案する「AI食」、スマートミラーを使った情報入力の省力化(フリクションレス)を実現する取り組みなどについて語り合われた。
アレルギー対応サービスなど食事嗜好プラットフォームを運営しているCAN EAT 代表取締役社長の田ヶ原絵里氏は「外食のアレルギー対応で賠償が起こるほど事故があることを背景に、外食で誰でも簡単にアレルギー対応が正確に行える2つのサービスを運営している」と語る。
「1つは婚礼向けのアレルギーヒアリングサービスで、もう1つはスマートフォンで原材料ラベルを撮影すると自動的にアレルギーの判定をし、アレルギー表を作るというものだ。一般消費者向けには自分のアレルギー情報をウェブで登録してQRコードでシェアできる食事嗜好のプロフィールサービス『CAN EAT』を無料で展開している」(田ヶ原氏)
CAN EATが本格的にローンチしたのは2019年12月で、約1年でユーザー数は6万人を超えたという。
「アレルギー対応ができるB2B向け商材に力を割き、個人向けサービスの宣伝はほとんど打たなかったが、6万〜7万くらいの登録があった。自分の食に課題がある方の意見をサービスに取り入れることができたので、口コミなどで自然に広がっているのかなと思っている」(田ヶ原氏)
信州大学発ベンチャーのウェルナスが取り組んでいるのは、自己実現を可能にするために設計した食事を提供するという「AI食」だ。ウェルナスは機能性野菜のナスに着目し、「ナス由来コリンエステル」をはじめとするサプリメント製造販売事業のほか、食品原料販売事業、ヘルスケアマネジメント事業などを展開している。
「AI食は自己実現を可能にする、それぞれの人の目標達成のために設計した食事のことだ。その人が食べている食事の情報とバイタル情報(脈拍や血圧、呼吸数などの生体情報)をAI解析することで、その人の目標達成を応援できるような栄養素、逆にネガティブな影響を与えてしまう栄養素を判別し、目的達成のための栄養組成を持った食事を提案する」(小山氏)
小山氏は例として、高血圧の方に向けたAI食を挙げた。
「一般的には高血圧の方には減塩が効果的と思われているが、(塩の主成分である)ナトリウムが血圧を下げる効果がある人がいる。一方で減塩が確かに効果があるという人もいるため、パーソナライズが必要になる。そこで高血圧の方13人にAI食を試してもらう試験を行った。すると血圧を上げる因子、下げる因子のパターンが人によって全然違うことが分かり、必要な栄養素の個性に基づいてAI食を設計した。当社の技術は目標値、たとえば血圧を10下げるためにどの栄養素をどのくらい増減すればいいかを具体的な数値で表せる。さらにそこから既存の食材データベースを使い、具体的に食材まで落とし込めるという技術だ。ベースのメニューに対してチーズを追加するとか、ご飯をちょっと減らすというアドバイスをしたことで、13人中12人の血圧が実際に下がるという結果が出た」(小山氏)
この例では高血圧の方に向けたAI食だが、「AI食は自己実現のための手段なので、数値化できるものならなんでも食との関係性を見られる」と小山氏は説明した。たとえば美容に向くAI食、アスリートなら記録を伸ばすAI食、学生なら学力を伸ばすAI食などの構築も可能という。
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