麻倉怜士氏が選ぶA&Vベストテン--万能の新技術から大衆映画の名作まで - (page 7)

第5位:日本が誇る大衆映画の傑作、本当の姿/BSテレ東「土曜は寅さん!4Kでらっくす『男はつらいよ』」(4Kコンテンツ)

「土曜は寅さん!4Kでらっくす『男はつらいよ』」(c)1969 松竹株式会社
「土曜は寅さん!4Kでらっくす『男はつらいよ』」(c)1969 松竹株式会社

 BSテレ東の開局20周年記念番組として放映している「土曜は寅さん!4Kでらっくす『男はつらいよ』」は、数少ない民放放送局の4Kコンテンツだ。男はつらいよシリーズは、2019年は第1作公開から50周年の節目ということもあり、デジタル化を実現。松竹最大の修復プロジェクトとして取り組んだ。

 今回の4K放送は、男はつらいよ50周年とBSテレ東20周年をあわせ、スタートしたもの。49作品すべてのデジタル修復とカラーグレーディングに、2017年3月から2019年3月まで2年を費やした。まず、フィルムデータを4688×3648ピクセルの4K解像度のデジタルへと変換。つぎに退色した色を調整し、シリーズを通して統一した画調にするためグレーディング作業を実施したという。

 オリジナルのネガはキズがあったり、退色が激しかったりとあまり良くない状態。撮影当時の関係者をスタジオに招き、当時の色を再現するなどかなり手がかかったと聞く。

 時間をかけて4K化したコンテンツは、素晴らしい仕上がり。まず、俳優陣の肌の色、質感が大変よく表現されている。さくらを演じる倍賞千恵子さんの肌は白く美しく、タコ社長こと太宰久雄さんの脂ぎった感じもよく出ている。49作品を通して、俳優陣の肌の質感がどう変わっていくかも楽しみの1つだ。また、各作品に登場するマドンナの肌を鑑賞していくのも面白い。

 劇場で映写されるフィルムは、何度もコピーを繰り返したもの。そう考えると、今回の4Kはある意味最高画質で見られる寅さんということになる。4Kになってはじめて、日本が誇る大衆映画の傑作の本当の姿が見えた。

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