パナソニックが空間に溶け込む、次世代のディスプレイ開発に取り組んでいる。11月20日には、視認性に優れた透明有機ELディスプレイモジュールを商品化。多彩な映像表現を武器に、店舗やラウンジなど新たな用途を見据える。
透明有機ELディスプレイは、背景が透けて見えることで、空間を遮断せずに周囲の環境に溶け込み、実物に重ねて映像を表示できるというもの。自発光のためバックライトがいらず、色鮮やかな高画質を再現できるとともに視野角も広いという有機ELの特徴をいかし、ディスプレイ部の厚みは、1cm未満と超薄型。1枚のガラス板のように周囲の空間に溶け込むことが特徴だ。
商品化する透明有機ELディスプレイモジュールは、透明有機ELパネルと電源ユニット、リモコンから構成されたモジュールタイプ。背景を透過させながら明瞭な映像表現できる「TP-55ZT100」と調光ユニットを備え、画面オン時コントラスト感とオフ時の透明性を両立する「TP-55ZT110」の2つをラインアップする。発売は12月上旬。法人向けのため納入先によって価格は異なる。
透明ディスプレイは、網戸と同様に、格子状に抜けた部分を通じて背景の景色が見える仕組み。RGBの色のついたセルと透明画素を交互に配置することで、オフ時には透明部分を通して背景が見える。パナソニックでは、自発光有機ELパネル搭載で広視野角をいかしたほか、高精度真空貼合により、透過率の減衰を抑制。広い空間での表示に適した広視野角と鮮やかな映像表示を実現している。
TP-55ZT110では、光の透過率を電気的に制御する独自開発の調光ユニットをパネル背面に装着することで、透明モードと遮光モードの切り替えを実現。遮光モードでは、調光ユニットの透過率を下げてパネル後方からの光透過を抑え、明るい環境下でも背景が見えない、黒の引き締まった高コントラストな映像を表示する。
パナソニックでは、透明有機ELディスプレイ以外にも、木製のテーブルに文字などを表示する「インタラクティブテーブル」や、「ミラーディスプレイ」などを開発している。インタラクティブテーブルは、日産自動車の体験型施設「NISSAN PAVILION」に導入。光源部分に新開発の多層化粧シートを組み合わせることで、質感を重視しながら視認性を向上しているという。
ミラーディスプレイは、鏡と光源の間に光制御デバイスを配置することで視認性を向上。専用設計の特殊光学ガラスも搭載し、鏡としての反射特性を均一化し、映り込みのない鮮明な映像を再現する。
パナソニック アプライアンス社スマートライフネットワーク事業部ビジュアル・サウンドBU商品企画部部長の村山靖氏は「ディスプレイそのものを表にだすのではなく、空間に溶け込ませる演出ができれば、心地よい空間を創出していける。2016年以降CES、IFA、CEATECといった展示会でサンプルを出展し、市場性を模索してきた。透明ディスプレイについては改良を重ね、透明ならではの魅力を体感いただけた。特に画面オフ時に黒い物体にならず、空間と調和できること、今まで映像が出せなかった窓ガラスなどに映せることは大きな魅力。従来と異なり、空間演出ができるディスプレイとして大きな期待をしている」とコメントした。
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