続いて、代替タンパク関連スタートアップ5社のピッチが行われた。オランダのMeatableが手がけるのは、牛や豚のサンプルを基に生み出す「培養肉」だ。
毎年600億頭以上の陸上動物が飼育されて食肉処理されており、世界の耕作可能な土地の約3分の1はそれら動物を飼育するために使われているとMeatable共同創業者でCEOのKrijin de Nood氏は語る。
「Meatableのビジョンは人や動物、地球に害を与えることなく、世界中の人たちの食肉に対する欲求を満たすことにある。そこで牛や豚から採取して生み出したマスター細胞を基に、脂肪と筋肉を成長させて人工肉を作り出すことで、本当においしいお肉が手に入る。牛や豚の最高品質の細胞のみを備えた細胞バンクがあり、バイオリアクターと呼ばれるもので細胞を増殖させる。そこから筋肉と脂肪組織を作り、正しい方法で組み合わせると本当においしいお肉が出来上がる。それ以降は既存のサプライチェーンで食肉加工、包装、保管、流通できる。われわれの使命は持続可能で効率的に生産できる食肉の世界的リーダーになることだ。2018年に設立した会社でまだ研究開発モードだが、今年は最初のプロトタイプ製品の開発に成功した。2023年までに人工培養肉を市場に投入すること、2025年までに商業規模の生産を行い、2027年までに持続可能な食肉の世界的プレーヤーになるという3つの野心的な目標を設定し、未来に向かって動き始めている」(Nood氏)
Kuleanaは植物原料を用いた代替シーフードを開発する米国のスタートアップだ。創設者兼CEOのJason Cruz氏は「消費者を水銀、寄生虫、マイクロプラスチック、汚染物質、ウイルスなどにさらしている、不健康でサステナブルではない、既存の食品システムを解決する」と語る。そこで最初に注目したのが生のマグロだ。
「マグロは養殖が非常に難しいと同時に、飼料効率が悪いため養殖に向かない。そこでKuleanaの最初の製品として植物ベースの生のマグロを作った。われわれは物理的なテクスチャ化と酵素処理を中心としたバイオテクノロジーを組み合わせて『テクスチャテクノロジープラットフォーム』を作り、世界最大の食品製造会社との共同研究プロジェクトで独自の質感を提供し、日々それを改善している。2021年初頭には米西海岸で製品を発売し、その後米国全体に拡大していく予定だ。マグロはほんの始まりに過ぎない。今後はサーモンやその他のシーフードを検討し、テクスチャテクノロジープラットフォームを使ってB2Bの機会を探っていく。米国のみならず、世界最大のシーフード市場である日本への進出も検討している」(Cruz氏)
続いて登壇したのは、2011年に設立された昆虫タンパク質スタートアップの仏・Ynsectだ。Ynsect 事業開発ディレクターのGillaume Daoulas氏は「2016年に仏パリとリヨンの間にあるドールを拠点に最初のパイロット工場を設立し、2020年には昆虫を持続可能な付加価値の高い原料に変えるための商業規模の昆虫工場の建設を開始し、2021年末までの完成を予定している」と語った。
Ynsectは「すべての人に自然で健康的で持続可能な食材を提供することにより、食物連鎖を再発明する」をミッションに、ミールワームの全自動ロボット化工場を稼働している。
ミールワームは繁殖が容易でエサも容易に入手でき、フランスでは小麦、米国ではトウモロコシ、東南アジアではキャッサバなど、地元の食材に適応できる。非飛翔性で発熱量が少なく、飼育に光を必要としない。さらにタンパク質含有量が非常に高く、病気のリスクが非常に低いといった特徴を持つという。
「ドールのパイロット工場ではロボティクスやビッグデータを活用して完全に自動化された垂直農法の工場になっている。この工場ではタンパク質含有量が約70%で、脂肪が約13%、炭水化物が約3%で水産飼料やペットフードだけでなく人間の食品にも非常に適した『Ynmeal』、87%の有機物を含み、アンモニア、リン、カリウムのバランスが非常にいい乾燥肥料の『YnFrass』、オメガ6とオメガ9が非常に豊富で、6℃で液体になるため動物の飼料として便利に使える『YnOil』の3つを生産する。建設中の商業規模工場『YnFarm』では合計約10万トンを生産できる規模になる」(Daoulas氏)
フランス以外にも、北米や欧州、東アジアなどへの進出も検討しているという。
「これらの地域は昆虫を育てる原料があるだけでなく、さまざまなクライアントがいる。水産、農業、ペットフード会社、食品会社、スポーツ会社などが主なターゲットだ」(Daoulas氏)
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