離農の増加や少子高齢化を背景に、日本では酪農・畜産の大規模化が加速している。すでにさまざまなデジタル化や自動化も進められており、次なる課題はさまざまな技術のインテグレーション(統合)へと移行しつつあるという。
本誌CNET Japanでは10月、フードテックカンファレンスをオンラインで開催。ファームノート代表取締役の下村瑛史氏によるセッション「世界の農業の頭脳を創る」では、酪農・畜産のDXと今後の展開について、質疑応答も交えて掘り下げた。
「酪農の基本は、牛をよく見ること。クラウド牛群管理システム「Farmnote」を使うことで、飼育における行動のロスを減らし、過去データの活用によって牛の状態の見落としをなくし、ミーティングの質も向上できた」
これは、セッション冒頭に流れたムービーに登場した、Farmnote導入1社目となった竹下牧場経営者のリアルな声だ。下村氏は「酪農と畜産における技術の進化を支援することで、世界の農業の頭脳を創りたい。インターネット技術を活用して、持続可能な食糧生産を実現したい」と事業への想いを語った。
現在、ファームノートの従業員は約60名。北海道帯広市に本社を構え、酪農・畜産のDXを推進するFarmnoteを提供している。これは、「牛の目の前で牛の情報を見られる牧場経営」を目指したソリューションで、同社は2019年に日本ベンチャー大賞で農林水産大臣賞を、2020年にはものづくり日本大賞において内閣総理大臣賞を受賞している。ちなみにこの受賞は、酪農・畜産関連企業としては初となる快挙だった。
ファームノートの顧客数は約4500社。Farmnoteを活用して管理されている牛の頭数は約43万頭で、国内約380万頭の11.6%を占めるという。下村氏は「北海道は国内54%の生乳生産量を誇り、1頭あたりの搾乳は世界トップレベル。酪農が非常に盛んな土地だ」と評したが、実は北海道にいる顧客は全体の約4割とのことで、Farmnoteの活用が全国へ拡大していることが窺える。
続けて下村氏は「離農や少子高齢化のため、生産者の大規模化が加速している。飼育頭数は380万頭を維持するも、生産者戸数は減少傾向」と説明。「国の政策としても、大規模化やスマート農業が推進されている。組織的な牧場運営や、技術を活用した経営が重視されつつあり、変革のときを迎えている」と話し、酪農・畜産のDXに対するニーズの高まりを強調した。
そのうえでFarmnoteの特徴を説明。日々、状況が変化する牛の状態を見える化し、リアルタイムに適切な管理を行えることや、管理会計の概念を持ち込んで、過去の運営実績に基づいた未来予測や、予実管理を行えるソリューションであることなどを示した。
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