公職選挙に立候補しようと考える障害者も、健常者より多くの問題に直面している。例えば、有権者と話すために、戸別訪問をするのに苦労するかもしれない。幸い、コロナ禍を受けて、選挙運動員がオンラインで有権者とつながることを可能にする「I C Voters」のような仮想の選挙運動ツールが登場している。これらのテクノロジーは、コロナが収束した後も、障害者の役に立ち続けるだろう、とBlahovec氏は述べている。
政治コンサルティング会社Nu View Consultingの創設者であるNeal Carter氏はI C Votersについて、障害のある候補者が有権者とより簡単に対話できるように支援するものだと語っている。このツールによって、障害のある候補者は、選挙への道のりで、平等な機会とアクセスを手に入れられる状態に一歩近づくことができる。
「世界が障害者の身体に適応した形になっていないことはすでに分かっている。障害者が公職に立候補したら、そのような現状はさらに実証されるだろう。障害者のための一時しのぎの解決策とみなされるようなすべてのテクノロジーも、さらに強調されてしまうだろう」(Carter氏)
幸い、テクノロジーをベースとした解決策は、徐々に増えつつある。「Brink Election Guide」は、アクセシビリティー技術が組み込まれたアプリで、投票の締め切り時間、郵便での投票や投票所での投票の時間と場所、方法などの情報に有権者がアクセスできるように支援する。「App Store」と「Google Play」で提供されている。
Center for Assistive Technology Act Data Assistanceで技術支援担当ディレクターを務めるDiane Golden氏によると、投票のアクセシビリティーを本格的に向上する要となるのが、デジタルインターフェースだという。これを実現するうえで大きなハードルの1つとなっているのが、セキュリティの専門家を説得することだ。こうした専門家らは、オンライン投票などのシステムは、紙での投票よりもセキュリティ面が劣っている、と警告している。だが、Golden氏は、あらゆる人のニーズに対応する完全にデジタル化されたプロセス(例えば、投票アプリなど)が近い将来登場することを期待している。
こうした類のデジタルツールは、AblrのCEOで視覚障害のあるSamuel氏のような有権者に役立つ可能性がある。同氏は点字を読めないため、2018年の選挙では、投票所の職員が投票ブースまで付き添って、同氏の代わりに投票用紙に記入しなければならなかった。自分で投票できる自立性がなく、他人に投票を委ねなければならないことに不安を覚えたという。誰もが簡単に政治プロセスに参加できるユニバーサルデザインを作り出すことが重要なのは、そのためだ、とSamuel氏は指摘する。
「それがテクノロジーであろうと、政策であろうと、最も重要なのは、実際にその設計や策定にあらゆる人々を含めることだ。障害者もそこに加わってもらう必要がある」(Samuel氏)
政治プロセスに関与するすべての人々の間で、そのように問題意識や包括性、理解が高まれば、未来の選挙はすべての人にとって、より参加しやすいものになるだろう。
「私たちは、存在するあらゆる業界、そして生活のあらゆる側面で、アクセシビリティーの戦いを繰り広げてきた」と、視覚障害のあるカリフォルニア大学バークレー校のGreco氏。「常にこのような戦いを続けなければならないのは、本当に疲れる」
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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