障害のある人々が今も直面している最大のハードルの1つは、利用しやすいウェブサイトが不足していることだ。私たちの生活の多くのことがオンラインで行われている時代、特に新型コロナウイルスが流行っている現在、ウェブのアクセシビリティーが整っていないことは、特に大きな支障になっている可能性がある。
デジタルアクセシビリティーに取り組んでいる企業のAblrが10月に発表したレポートによると、Donald Trump大統領、Joe Biden前副大統領、Mike Pence現副大統領、Kamala Harris上院議員の選挙運動サイトには、アクセシビリティーに関して合計44件の違反があったという。レポートでは、「どのランディングページも「ウェブコンテンツ・アクセシビリティー・ガイドライン」(WCAG)によって定められた基準に準拠していない」と結論づけられている。これらの違反が原因で、障害のある6100万人の有権者が重要な情報にアクセスできない可能性があるという。さらに、Voxの2019年のレポートによると、2020年の大統領選挙で、アクセシビリティーを備えた選挙運動サイトを提供している候補者は1人もいなかったという。
「われわれは、サイトのアクセシビリティーとユーザービリティーの向上に継続的に取り組んでおり、できるだけ多くの訪問者のニーズに対応するウェブ体験を提供すべく努力している」。Biden前副大統領の選挙運動の広報担当であるRosemary Boeglin氏はそう述べている。「包括性を確保し、アクセシビリティーを強化するため、『Perkins Access』のような専門の団体と今後も連携していく」(同氏)
Trump氏の陣営はコメントの依頼に応じなかった。
Ablrの最高経営責任者(CEO)のJohn Samuel氏は、次のように語っている。「アクセシビリティーは、組織の最も高いレベルでも見過ごされがちで、私たちはその問題に真剣に取り組まなければならない。理解と問題意識の欠如は、リーダー層に障害者がおらず、そうした政策の策定に尽力できないことに起因する」
米国自由人権協会(ACLU)とCenter for Accessible Technologyの2015年の調査によると、米国のオンライン有権者登録サイトのうち、障害者に完全なアクセシビリティーを提供しているのはカリフォルニア州のサイト1つだけだったという。さらに、ほとんどの州のサイトは、最低限のアクセシビリティー基準さえ満たしていなかった。
連邦政府の省庁や機関が提供する電子技術や情報技術は、アクセシビリティーへの対応が法律で義務づけられているが、順守率は非常に低い、と語るのは、National Council on Independent Living(NCIL)で市民参加と投票権のオーガナイザーを務めるSarah Blahovec氏だ。Blahovec氏によると、その理由は主に、基本的に消費者から苦情があって初めて法律を順守するための対策が講じられること、そして、組織の高いレベルで説明責任のプロセスが欠如していることだという。
「(問題を報告するという)負担を障害者に負わせるべきではない。人々に法律を順守させるために障害者に負担をかけるというのは間違っている」(Blahovec氏)
問題があるのは、選挙関連のサイトだけではない。ウェブのアクセシビリティーに取り組んでいるaccessiBeのレポートによると、同社が分析した米国のウェブサイトの98%は、完全なアクセシビリティーを提供していないという。さらに、Pew Research Centerによると、障害のある米国人の間では、健常者に比べてオンラインに全くアクセスしないと答えた人の割合が3倍近く多く、家庭用ブロードバンドに加入していると答えた人やコンピューター、スマートフォン、またはタブレットを所有していると答えた人の割合が約20ポイント少なかったという。
一部の政治家はオンラインアクセシビリティーを義務づける法律を可決すべきだと主張しているが、カリフォルニア州から選出された元下院議員で、ADAの立案者の1人でもあるTony Coelho氏は、そのような法律は裏目に出る可能性があるとしている。インターネットがADAの対象になると規定した法律を作ることは、現状がそうではないことを暗にほのめかしているが、裁判所はインターネットがADAの対象になるという裁定をすでに下している。
「立法を目指すことは、プラスにならない。われわれに必要なのは、法律が適用されるようにすることだ」(Coelho氏)
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