2018年の米国中間選挙で、Lucy Greco氏は投票に関する詳細を確認しようと、オンラインにアクセスした。カリフォルニア大学バークレー校のウェブ・アクセシビリティー・エバンジェリストであるGreco氏は、視覚に障害があり、それらのサイトの多くを利用することができなかった。リンクのテキストが不適切だったり、リンクにテキストが全く含まれていなかったりしたため、アクセスできなかったからだ。
しばらくして、候補者が賛成している政策と反対している政策が記載されたウェブページがようやく見つかった。しかし、その過程で直面したいくつもの障壁は、いら立たしいものだった。
「私は、ほかの皆が行けるような場所には行けない。アクセシビリティーを備えた場所を探し出す必要がある」(Greco氏)
Greco氏は、米国の成人人口の26%を占める障害者コミュニティーの多くの人々の1人にすぎない。投票や政治プロセス全般に関して、障害のある人々はテクノロジー関連の問題に直面している。有権者登録のウェブページや選挙運動のサイトのアクセシビリティーが整っていない場合、多くの障害者はさまざまな問題に遭遇する。自分で投票する場合、投票所に正常に機能する機械があるかどうか、投票のために途方もなく長い列を作って待たなければならないのかどうか、といったことを心配しなければならない。建物の外のスロープが急勾配だったり、駐車場の設備が十分に整っていないなどの問題もある。
2012年米国大統領選挙での投票所のアクセシビリティーに関するレポートによると、障害者の30%は投票所で何らかの問題に直面したという。健常者の場合、その割合は8%だった。投票用紙の内容を読めない、または見られない、投票装置の使い方が分からない、または使用できない、といった理由が最も多かった。
いくつかの組織が、政治プロセスにおけるテクノロジーのアクセシビリティー改善や投票率の向上、公職選挙への立候補を考えている障害者の支援に取り組んでいる。Twitterのハッシュタグ「#CripTheVote」は、米国における障害者に関する問題について、議論を促すことを目的とした超党派の運動の一環であり、投票所での体験から、より包括的な医療を主張することまで、さまざまな話題に関するツイートが多数投稿されている。一部の州では、障害のある人々が投票用紙をダウンロードできるようになっており、支援技術を使って内容を読み上げ印を付けて、郵送か提出することができる。さらに、あらゆる人がオンライン投票のリソースにアクセスできるようにするためのツールもいくつか提供されている。
さまざまな場所に点在する障壁を取り除けば、より多くの障害者が投票しやすくなるだろう。そうなれば、選挙の投票率に大きな影響を及ぼす可能性もある。ラトガーズ大学が2016年の米国大統領選挙についてまとめたレポートによると、「障害者が同じ人口統計学的特性を持つ健常者と同じ割合で投票した場合、投票者数は約220万人増加する」という。障害者コミュニティーからの投票が増えれば、選出された役人たちはアクセシビリティーの問題をより真剣に受け止めるようになるだろう、とアメリカ進歩センターで「Disability Justice Initiative 」(障害者の司法に関するイニシアチブ)担当ディレクターを務めるRebecca Cokley氏は述べている。
イリノイ州選出の民主党議員で、上院で初めて両下肢を切断した女性議員となったTammy Duckworth氏によると、特に米国人障害者法(ADA)が1990年に制定されてから、テクノロジーのおかげで、障害のある有権者や候補者が選挙に参加しやすくなったが、改善の余地はまだ大いにあるという。
「候補者に会ったり、集会に参加したり、投票所に行ったりするために移動することが、多くの人にとって、障害になる場合がある。自動車を所有しておらず、公共交通機関が普及している地域に住んでいる人にとって、多くの交通機関は完全なアクセシビリティーを備えておらず、ライドシェアの機会もほとんど存在しない場合がある。こうした問題は、オンラインで参加することによって部分的に克服できる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行している現在は、特に有用だ」(Duckworth上院議員)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス