作業療法士から障害者権利の活動家に転身したAlanna Raffelさんは、そのキャリアを通して、アクセシビリティについて考えてきた。そして、2017年、Raffelさんは30歳の誕生日に自身の情熱を行動に移した。
Raffelさんはペンシルベニア州フィラデルフィアで、障害のあるクライアントと働いた経験があった。しかし、障害の程度がさまざまである人々に対応できるミーティングスペースを見つけるのがいかに難しいかを知ったのは、2016年後半に支援運動への関与を深めるようになってからのことだった。フィラデルフィアのような古い都市でそうした場所を探すのは、特に難しい。建物の多くは、米国の障害者法にあたる「障害のあるアメリカ人法」(ADA)が可決される200年以上前に建設されているからだ。
そこで、2017年4月、Raffelさんはアクセシビリティに対応した地図を作成するイベントを主催した。そのイベントでは、彼女の家族や友達が「Access Earth」というアプリをダウンロードして、地域の企業や店舗を調べ回り、店舗やレストランに、入り口に段差がないかどうかや、トイレはバリアフリーかどうか、といった質問に答えてもらった。フィラデルフィアのセンターシティ地区で、車椅子でアクセスできる場所とそうでない場所を特定することが狙いだった。
その体験は、啓発的なものとなった。
「バーやレストランに行きたくなったら、私はそこのメニューや所在地をスマートフォンで検索する。自分がそこのトイレを使えるかどうか、あるいはバーやテーブルまでたどり着けるかどうかということを、私は確認する必要がない。けれど、車椅子を使用する私の友達は、そうしたことを確認しなければならない」(Raffelさん)
ADAなどの法律は、事業所や店舗、公共施設に対し、障害者のために相応の便宜を図ることを義務付けているが、それらの法律が必ずしも遵守、もしくは履行されているわけではない。古い施設の多くは、これらの法律の適用を免除されている。障害のある人にとって、それは、移動すること、そしてどこがアクセシビリティ対応でどこがそうでないのかを知ることが困難であることを意味する。
「それは宝くじを買うようなもの」。シカゴで暮らす35歳の車椅子利用者のMichele Leeさんは、そう話す。Leeさんは15年前に自動車事故で脊髄を損傷して以来、車椅子で移動している。「電車の駅に、正常に動作するエレベータはあるのか。歩道で工事が行われていないかどうか。自分の行きたいレストランに車椅子で入れるトイレはあるのか。こうしたことを確認する方法がない」(Leeさん)
しかし、Access Earthのようなアプリは、よりよい情報を提供することで、障害者の人々の生活をもう少し快適にすることを目指している。多くの場合、そうしたアプリは、解決したい問題を直に知っている人々によって開発されている。アクセシビリティ情報を共有するアプリの「AccessNow」を開発したMaayan Ziv氏は、生まれつきある種の筋ジストロフィーを患っており、車椅子を使用している。多発性硬化症を患う映像制作者のJason DaSilva氏は、「AXS Map」を創設した。このアプリでは、ユーザーがさまざまな場所のアクセシビリティを評価できるようになっている。
このようなアプリを手がけているのはスタートアップばかりではない。GoogleやYelpといった著名企業もそうした動きに気づいており、自社の検索製品やレビュー製品にアクセシビリティの情報を追加し始めている。
Raffelさんが地図を作成するイベントで使用したAccess EarthのアイデアをMatt McCann氏が思いついたのは、旅行でロンドンに滞在しているときだった。McCann氏はアクセシビリティ対応(バリアフリー)のホテルをウェブで検索したにもかかわらず、そのホテルに到着後、ロビーとエレベーターの間に階段があることに気づいた。
「私にとって、これは明らかにアクセシビリティ対応ではなかった」。McCann氏は、そう語る。同氏は生まれつき脳性麻痺を患っており、車椅子を使用している。
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