LIXILは10月14、19、22日、同社初となる学生向けハッカソン「研究データを用いた新技術実験設計」を開催した。研究施設「U2-Home II」(ユースクエアホームツー)で収集したクローズドデータを提供し、新たな視点からのアイデアを募った。
LIXILでは、少子高齢化などを背景とした新築住宅着工件数の減少などの現状を受け、新領域の商品開発を積極的に進めている。今回の学生向けハッカソンも、今までにない、新たな商品開発の種をみつけることが狙い。あわせて、AIエンジニアなど技術系学生に「住宅分野にも興味を持ってもらいたい」という思いもあったという。
学生向けのハッカソン、インターンシップのプラットフォームである「Peakers」で9月中旬に募集を開始。13名の学生が10月14、19、22日の3日間、ハッカソンに参加した。
今回のハッカソンではU2-Home IIのクローズドデータを使うことが特徴。U2-Home IIは、一軒家をリフォームして作った研究施設で、施設内には温度、湿度、人感センサーなど250個のセンサーを設置。加えて電気、ガス、水道の使用量などのデータも取得可能だ。実際にLIXILの商品を開発する上でも活用している施設だという。
そのデータから住まいに関する課題を導き出し、その課題を解決する新技術を提案することが今回のテーマ。学生には、LIXILの社員がビジネスメンター、技術メンターとして付き、アイデアを出していったという。そのうち上位6人が最終日にプレゼンを披露。1~3位には以下の3人が選出された。
LIXIL ビジネスイノベーション統括部統括部長の三原寛司氏は「短時間にもかかわらず、よくデータを分析し、新しい気付きを提案していただけたと思う。センサーで取得したデータを活用することで、私たちはお客様とのタッチポイントを増やしていきたいと思っている。LIXILは、新築時に選んでもらい、長く使ってもらえるのに、お客様とのつながりを作りづらい。今回のような新しい発想を持った人にジョインしてもらうことで、お客様とのタッチポイントを増やし、新しいLIXILを作っていきたい」とコメントした。
メンターとして参加したLIXIL デジタル部門デジタルテクノロジーセンターグループリーダーの栗本浩佑氏は「短い時間の中であそこまでアイデアをまとめあげ、発表までしたのはとても良かった。社内でも新事業に向けたコンテストやイベントは開催されているが、それとは着眼点がまったく異なる面白いアイデアが出てきた。また一人暮らしの学生だからこそ考えつくアイデアもあり、唯一の時間になった」と振り返る。
学生向けハッカソンで得たのは「新しい発想、違う着眼点から得られる気づき」だ。「デジタルネイティブと呼ばれる世代は、小さい頃からスマホやゲームに親しみ、会社の中で考えるのとは違う発想が出てくる。これはこれから家を建てる世代も同様。そういった感覚をなくさず、しっかり新しいアイデアを吸い上げていくカルチャーに会社がなればより良い商品が出せる」と三原氏は今後を見据える。
採用面においても「LIXILでは、AIエンジニアなど技術系の採用を進めているが、その分野の学生は住宅関連業界でその知見が生かせることに気づいていない人が多い。今回は快適な暮らしを実現するという身近なテーマで、そうした知見をいかした仕事ができるという発見の場にもできたと思う」(LIXIL Human Resources Recruitment Office主幹の齋藤恵介氏)と活路を見出す。
今回のハッカソンは、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、完全オンラインで開催した。移動の必要がないため、全国から学生を募れたほか、開催中に抜けたりすることもなく参加してもらえたことがメリットだったという。
Zoom Roomsを使ってディスカッションを進めたほか、Slackも活用したという。ツールは使い慣れていない人もいたというが、コミュニケーションはかなり活発にできたとのこと。
栗本氏は「オンラインで難しいと感じたのは、画面をのぞき込んで教えたり、横にいるからこそ声がかけやすいという部分ができなかったこと。しかし、オンラインでここまでできるとは思っていなかった。大成功だったと思う」とした。
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