テレワークや在宅勤務の動きが拡大し、ある意味大幅に働き方改革が進んだといえる昨今。それと同時に、企業にとってはオフィスそのもののあり方を考え直す必要も出てきたのかもしれない。多くの従業員が自宅などオフィスの外で働く形になれば、従来の大規模なオフィスは無用の長物になる可能性もある。
もちろん、業務内容によってはテレワークでできることには限界があり、業務効率がオフィスよりも高くなるとは言えないケースもあるだろう。さまざまなメリット・デメリットの狭間で、大企業はこの数カ月間、どんな変革をしてきたのだろうか。
CNET Japanは7月15日にオンラインセミナーを開催。サッポロビールとLIXILの総務・人事担当者をパネリストに迎え、これからの「新しい働き方」についてディスカッションした。
創業から150年近くの歴史をもつサッポロビールは、東京・恵比寿に本社を構え、主に酒類の製造、販売を行っている。従業員数は2000名を超えているが、3月からは原則在宅勤務とし、全国に緊急事態宣言が発出された4月からはほぼ完全に在宅勤務に切り替えた。
事業継続上どうしても出社しなければならない場合でも、決まった時間に出勤を限定したり、感染防止対策の徹底を求めるなど条件付きとした。緊急事態宣言が解除された6月からは在宅勤務を中心にしながら、感染防止につながる対策を施したうえでの出勤も可能な体制に変わっているという。
同社総務部長の森本真紀氏によると、現状のオフィス内での対策としては、各部署でその日に出勤する人数の上限を50%かそれ以下とし、メンバーでローテーションを組んで出勤するというのが1つ。
座席は2メートルの距離を空けて座るようにし、たとえばすぐ前・横・後ろの席に座らず、必ず斜向かいに座るように促している。また、社内ミーティングも会議室の収容可能人数の半分以下のメンバーで行うものとし、可能な限り短時間で終えるようにしている。来客についても事前に検温などを依頼し、来社時にもアルコール除菌やマスクの着用を働きかけているという。
このように感染状況や国・自治体の動きに合わせて対応してきた同社だが、在宅勤務になったことによって、従業員が社外から社内システムにアクセスする際のネットワーク回線のキャパシティ不足が浮き彫りになったという。
回線増強を図る一方で、必要のないときはこまめな通信の切断を心がけることや、混雑しがちな時間帯を避けて利用するように案内。オンライン会議では映像をオフにして音声のみにするなど、トラフィックの分散や軽減に努めることで次第に従業員もテレワークの作法に慣れていったとのこと。
また、企業のテレワーク化でよく課題として挙がることの多い紙書類や押印の問題も発生した。社内手続きでは印刷した紙書類のやりとりや上長の捺印が必須となっていたが、これについては一度省略して電子データで手続きを進められるようにし、出社が可能になったタイミングで紙書類の提出・押印をして事後提出する手順に変えたという。そのため、紙書類の削減や電子署名の導入など、会社として取り組むべき課題も見えてきたと森本氏は話す。
他にも今後解決していくべき大きな課題はある。その1つは、従業員同士、あるいは会社・従業員間でのコミュニケーションのあり方を考え直す必要に迫られてきていること。たとえばオフィスでは、なにげない雑談から仕事に関係する新たな気付きや情報が得られることもある。
しかし、在宅勤務のみになってしまうとそうした雑談が生まれにくい。在宅勤務であっても、仕事上必要な意志伝達や情報共有ができるのは前提として、そのうえで仕事のアイデアにつながるような新たなコミュニケーションの方法を考える必要があるとした。
さらに仕事をする“場”そのものについても、「どこで何をするために働くのか、それにはどんな場所がいいのか」という点を突き詰めると、単純にオフィスや自宅ではなく、「もう1つ、サテライトオフィス的なものも考えられる」と話す。
従来型のオフィスを利用する目的が今後変わっていくとすれば、オフィスという存在自体も変わっていかなければならないと述べ、こうした「働く場の環境整備、多様化」については「ビフォーコロナには戻らないだろうくらいの考え」で取り組んでいきたいと語った。
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