オードリー・タン氏とLINEのシン代表が対談--両者が考える「テクノロジーとの向き合い方」

 LINEは9月10日、オンラインカンファレンス「LINE DAY 2020 ―Tomorrow’s New Normal―」を開催。同カンファレンスには、台湾のデジタル担当大臣として知られるオードリー・タン(唐鳳)氏がゲストとして登壇した。本稿では、同氏とLINE代表取締役CWOの慎(シン)・ジュンホ氏とのトークセッションについて抜粋してお届けする。

同カンファレンスで、動画としてゲスト登壇したオードリー・タン(唐鳳)氏
動画でゲスト登壇したオードリー・タン(唐鳳)氏
LINE代表取締役の慎(シン)・ジュンホ氏
LINE代表取締役CWOの慎(シン)・ジュンホ氏

台湾でのこれまでの取り組み

 同トークセッションのテーマは、パンデミック後の「New Normal(ニューノーマル)」と称する社会の在り方において、人や企業はテクノロジーにどう向き合い、活用していくべきか、というもの。冒頭には、台湾で行ったCOVID-19への取り組みについて、オードリー・タン氏の口から改めて全貌が語られた。

 「昨年12月、リー・ウェンリアン医師が武漢から投稿したコロナウィルスを警告する動画が、台湾のSNSであるPTTで再投稿されました。その後すぐ、台湾の医療機関が1月1日より、武漢からのフライト搭乗者の健康調査を開始しました。これは他の国々よりも少なくとも10日早く開始することができました。国民が不安を抱き始める前にテクノロジーが活用されるべきだと思っていたので、私たちはネットや毎日、放送・配信のある主要メディアで記者会見を配信しました。また『1922』のフリーダイヤルを設置し、相談や質問を受けられるようにしました。私たちはまだ台湾人の感染者がいなかった1月という初期にこれらの対策を行なったのです」

 同氏によれば、台湾では2003年のSARSの時から毎年訓練を行なっていたため、コミュニケーション技術もマスクの生産も体制が整っていたとのこと。具体的に、1日約200万枚だった医療用マスクの生産は、ほんの数ヶ月で2000万枚以上に成長したことを紹介。そして、マスクが国民に行き渡りやすくするためにも、ITが活用されたと同氏は続けた。

台湾で利用された医療用マスクのマップ表示
台湾で利用された医療用マスクのマップ表示

 「私たちの主な仕事は、生産を強化しつつマスクを平等に行き渡らせることでした。そして、ホワード・ウー氏とフィ・ウェンチャン氏が医療用マスクマップを開発したことで、国民はどの薬局にマスクがあるのか情報共有ができるようになりました。このマップを官僚のマスク会議に持ち込みました。市民から信頼されている薬剤師の仕事の予定表と対応可能時間をリアルタイムで発信し、30秒ごとに更新するようにしました。マスクを求めて並んでいる人は、台湾に住んでいる人の99.9%が保有している国民健康保険証をかざすだけで、1回で2週間分のマスク9枚、子どもであれば10枚入手できるようになりました。自分より前の人がマスクをもらったあと、自分のsyマートフォンのマップを再読み込みすれば、(マップに表示されている)マスクの数が9または10減ります」

 こうした取り組みができた背景として、同氏は「政府が国民を信頼しているからデータを公開し、国民は政府を信頼しているからこのマスクマップに協力しました」と信頼関係が重要であることを強調した。さらに、マップ表示とあわせてチャットボット技術も活用されたことで、95%以上の台湾市民にICカードを利用したマスク供給が可能になったという。

 「国民はチャットボットも使用することができるようなりました。台湾で一番人気のチャットボットは、台湾疾病管制署のLINE公式アカウントです。2月の最初の週ですでに百万人のフォロワーが増えました。高齢の方はマップを使うのが難しいかもしれませんが、このチャットボットなら、LINEに入っているGPS機能を使ってどこの薬局にマスクがあるかを教えてくれるのです」(タン氏)

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