ソニーの商号を引き継ぐ覚悟--ソニーエレクトロニクス石塚社長が語るビジョン

 ソニーエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの石塚茂樹氏と、代表取締役副社長兼COOの高木一郎氏が、同社事業の方向性などについて説明した。

 4月に発足したソニーエレクトロニクスは、イメージング・プロダクツ&ソリューション事業、ホームエンタテインメント&サウンド事業、モバイル・コミュニケーション事業を統括。2021年4月には「ソニー株式会社」の社名を継承して、エレクトロニクス事業を推進することになる。

ソニーエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの石塚茂樹氏(右)と、代表取締役副社長兼COOの高木一郎氏(左)
ソニーエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの石塚茂樹氏(右)と、代表取締役副社長兼COOの高木一郎氏(左)
ソニーエレクトロニクスの事業領域
ソニーエレクトロニクスの事業領域

 ソニーエレクトロニクスの石塚氏は、2021年4月から、ソニーの商号を引き継ぐ上で、会社の新たなビジョンを、「世界中の人と社会に、テクノロジーの追求と新たなチャレンジによって、『感動』と『安心』を提供し続ける」に制定したことから切り出した。

 「ソニーは、技術を詰め込んだエレクトロニクス商品でブランドを築き、事業領域を広げてきた。ソニーエレクトロニクスのコアはテクノロジーであり、その上位概念として、技術開発にフォーカスし、新たなことに対するチャレンジ精神がある」としながら、「チャレンジ精神というのは、ソニースピリットである。いまのような困難な時代こそ、チャレンジするソニースピリットが大切である」と語る。

ソニーエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの石塚茂樹氏
ソニーエレクトロニクス 代表取締役社長兼CEOの石塚茂樹氏

 また、ソニーの商品やサービスにおいて代名詞ともなっている「感動」という言葉については、次のように語る。「ソニーは、エレクトロニクス事業において、クリエーターとユーザーを『感動』でつなぐ役割を担ってきた。そして、ニューノーマル社会において、世界中で移動が制限されているなかでも、人々がエンターテインメントの『感動』を求める気持ちには変わりがないことを再認識した」とする。

 そして、安心という言葉を盛り込んだ点については、「人を支えるメディカル事業という観点からの安心だけに留まらず、品質への信頼、通信で人とつながることで得ることができる安心感という意味もある」と語る。ここでは、バージンプラスチック削減活動やブリスターパッケージのプラ材の廃止など、社会の一員としてのサステナビリティへの取り組みも盛り込んでいる。

 このように、石塚氏は、ビジョンを構成する言葉のひとつひとつに強い思いを込めていることを強調する。

 それもそのはずだ。石塚氏は、ビジョンの策定においては、1946年1月に、創業者の一人である井深大氏によってまとめられたソニーの「設立趣意書」を改めて読み込み、経営幹部全員で議論を重ねた数に練り上げたとする。

 2007年に、デジタルイメージング本部を立ち上げたときにも、石塚氏は高木氏、そして現在、ソニーのR&D部門を統括し、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ 代表取締役副社長を務める勝本徹氏とともに、まったく同じ作業をしたという。

 「時代に応じて言葉を変えることはあるが、経営の羅針盤をまったくぶれていない。設立趣意書に書かれたソニーの創業の精神は、いまの時代にも即した言葉になっている。ソニーの創業者精神を大切にし、これをもとにしたビジョンを徹底して社内に浸透させる。2021年4月のソニー株式会社のスタート、そして、中期計画の策定においても、このビジョンに基づいた経営を進める考えだ」とする。

エレクトロニクス事業で重視する「3つのR」

 石塚氏とともに、経営の舵取りを担うソニーエレクトロニクスの高木氏も、「50年前のソニースピリットと、いまのソニースピリットは、質が違う。時代にあわせて、我々も変化する。チャレンジの仕方も変化する。先祖返りはしない。新たなソニースピリットで、挑戦をしていく」と語る。

 また、石塚氏は、こうも語る。「新型コロナウイルスが社会を変えたいま、長期視点に基づく経営の重要性を痛感している」

 これは、もうひとりの創業者である盛田昭夫氏の言葉であり、5月に発表したソニーの経営方針説明において、ソニー 代表執行役会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏も発していた言葉でもある。

 「エレクトロニクス全体で、どんな成長路線を描くか、いかに新規事業を開拓していくか。これが大切である。ソニーの吉田社長兼CEOからは、『事業の探索』という言葉を示されている。目の前にあるコロナ危機は、これまでに何度も危機を乗り越えてきた経験をもとにすれば、乗り越えられると考えている。問題は、アフターコロナのあとの成長路線をどう描くかである。これが、ソニーのエレクトロニクス事業にとっての新たなチャレンジである。中長期的な考え方は、事業の急激な成長ではなく、安定的利益を確保しながら利益を伴った緩やかな成長を目指すというものだ。それに向けて、安定して、成長できる『仕込み』をすることが課題である」とする。

 ソニーは、エレクトロニクス事業において、3つのテクノロジーを重視するという。その3つのテクノロジーとは、「リアリティ」、「リアルタイム」、「リモート」という、「3つのR」で示される。

 石塚氏は「これまでは、音、映像、通信の技術によって、リアリティやリアルタイムを極めた商品、サービスを展開してきた。これに加えて、人と人、人とモノを遠隔でつなぐリモートの価値が、いま求められている。3つのRのテクノロジーで、さまざまなチャレンジを行っていく。たとえば、エンターテインメント領域では、コンテンツ制作者も視聴者も、移動や集会の制約を受けるなか、3つのRのテクノロジーを活用することで、新たな体験を提案できている」とする。

 ソニーPCLでは、バーチャルプロダクション・ラボを開設。大型ディスプレイに、実写やCGの背景を映し出し、本物のセットやロケ地と変わらない映像制作を行えるという。これは、ソニーが放送分野で培ってきた技術力を、ニューノーマル時代に進化させた一例であり、「リモート」という観点から、映像制作を行う事例だ。将来はこの技術をリモート音楽ライブにも展開できるという。

 また、スポーツでは、「ホークアイ」の事例を示す。ホークアイは、トラッキング技術を用いたテニスのイン、アウト判定や、サッカーのゴール判定、ラグビーの審判判定補助などに利用されているもので、新たに米メジャーリーグベースボール(MLB)や、プロ野球ヤクルトスワローズがこれを採用。球場全体のボールや選手の動きをミリ単位の正確さで光学的に捉え、リアルタイムで解析して、データ化。選手の強化や育成、観客や視聴者へのエンターテインメントに利用できるという。

 「エレクトロニクス事業のさらなる一体運営と、リアリティ、リアルタイム、リモートによる3つのRのテクノロジーで、競争力強化と新規事業創出に果敢に取り組んでいきたい」と語る。

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