設備、材料の納品遅れによる「工期の延長」が各所で起こる中、不動産会社オープンハウスグループで、建設、設計、施工などを請け負うオープンハウス・アーキテクトは、「工期延長ゼロ」を実現。2019年同月比で完工棟数が伸びる傾向が出るなど、底力を見せた。
深刻な工期遅れが次々に発表された中、オープンハウス・アーキテクトはなぜ「いつも通り」の工事を継続できたのか。当時の建設業界の状況を含め、執行役員・工事統括本部長の松丸和好氏に話を聞いた。
――コロナの影響が出始めた当時の状況を教えて下さい。
日本では2月下旬から3月にかけて、新型コロナ感染拡大の影響が表面化してきましたが、私たちではその少し前、2月の初旬から危機感をもって対応していました。その時点では、まだ実害が出ている状況ではなかったのですが、社内に対策チームを編成しました。
対策チームでまず取り組んだのは、どの商材が足りないかということ。明確には現れていなかったのですが、中国の武漢に工場があるメーカーの住宅設備や建材などは間違いなく、影響が出るだろうと予測し、それを対策チームを通して社内で共有しました。
初動が早かったこと、そこで必要な住設や建材を特定できたことが、後々大きかったと思っています。
――対策チームというのは。
住設、建材メーカーの窓口になっている渉外企画グループと工事部、さらに営業部、発注を手掛ける管理部、これに建築部門のスタッフが加わって編成しました。固定人数は約10名です。特に重要だったのは工期をリアルタイムで把握している渉外チームで、ここが持つ情報で現場のオペレーションが変わってきます。通常時でも工期が遅れ、お客様への引き渡しが遅れる際は、代替案を出して最善の方法を取っており、そうした動きがコロナ禍でも役立ちました。
――建築の工期遅れが話題となっていた3~4月の頃、最も困っていたのはどんなことでしたか。
食洗機とIHクッキングヒーターが足りなかったことですね。仕入れ先の工場が中国武漢にあり、納品は絶望的でした。もちろんすぐに他社への発注を依頼しましたが、そこにも多くの現場から注文が殺到し、生産が追いつかない。あらゆるメーカーに問い合わせても納期について明確な回答はでない。3~4月はそんな状況でした。
そうした動きを受け、営業部がお客様との話し合いを開始。食洗機は納品後すぐに取り付けるという形で了承いただくケースが多かったですが、IHはないと生活ができない。そこで、卓上IHを用意して、当初はそちらを使っていただき、納品後製品を取り付けるという形をとりました。
もちろんすべてお客様の了承を得た上で、覚え書き書をお渡しして進めました。こうした動きもすべて対策チームで共有することで、渉外チームからお客様とやりとりをさせていただく営業まで、全員が引き渡しの状況を理解できました。
こうした代替案を承諾いただけるかはお客様次第ですが、事情をしっかりと説明させていただき、最終的にきちんとした形に仕上げるという前提で、引き渡しトラブルは一切ありませんでした。
――建材についてはいかがでしたか。
建材については、たまたま混乱が起こる前に発注ができていたので、それほど大きな品不足には陥りませんでした。運が良かったと言ってしまえばそれまでですが、私たちの日頃の現場管理がきちんとできていたことが大きかったと思っています。
オープンハウス・アーキテクトでは、常に1500棟程度の新築物件が動いており、その現場すべてで工期管理をしています。もちろんほかの現場でも工期管理はしていますが、管理の密度が違います。
着工、上棟、職人の方の進捗などはもちろん、建材の納品日やスケジュールに対してどのくらい遅れているのか、どうすれば間に合うのかという、通常であれば現場監督の頭の中にしかないような部分まで可視化することで、渉外チームが巻き取って指示を出しています。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」