オープンハウス、コロナ禍でも工期遅延ゼロを支えた基幹システム「KIZUNA-X」と先読みの力 - (page 2)

基幹システム「KIZUNA-X」が現場を変える

――管理システムはどういったものを使っているのですか。

 自社開発の業務基幹システム「KIZUNA-X(キズナエックス)」を使っています。正式導入は2019年の1月ですが、それ以前にプロトタイプを使って開発を進めてきました。

 営業の契約事前申請から、工事の発注業務、工程管理、引き渡しに至るまでの幅広い領域に対応することが特長で、現場計画や各工程の進捗が記録され、常に工事の状況を把握できるため、効率的に進められます。住宅部材を工場で事前に加工するフルプレカット工法と合わせ、過去3年間で工期を2階建において21%、3階建において16.4%短縮できたという実績も出ています。

 システムとしての精度はもちろんですが、何よりこだわっているのは入力のリアルタイム性です。これはとにかく建築に関わるすべてのスタッフに指導するしかなく、それを繰り返すことで、精度を上げられました。現在はPCだけでなく、スマートフォンからでも入力できるようにして、さらに更新頻度を上げています。その場で入力できることで、仕事の効率化にもつながっています。

 加えて、自動工程設定機能を設け、1つ目の工程を入力すると、その後の工程が自動で入力され、概算がすぐに出るようにしています。ゼロベースで工程を入力してもらうのはさすがに大変ですが、参考日程があるとそこから微調整をするだけでいい。そうした使いやすい仕組みを採用しています。

 こういった取り組みにより、つねに96%以上の建築中の物件の状態が確認できています。入力の状態は工事部がモニタリングしていますので、入力率が下がっている拠点に対しては、入力を働きかけるなど、チェックの仕組みもつくりました。

――デジタル化、IT化が遅れていると言われる建築現場ですが、かなりデジタルトランスフォーメーションが進んでいますね。

 従来までの建築現場は監督に属人化している部分があり、状況が可視化しづらかったんです。住宅やビルなどの建築は、現場がすべてと捉えられがちですが、発注から設計、スケジュール管理と関連する他部署の連携によって構築されています。今までは現場とそれ以外の部署をつなぐものがメール程度しかなかった。KIZUNA-Xでは、一元管理システムとして、現場とその他の部署とのやりとりまで一元管理できるようになりました。

基幹システム「KIZUNA-X」
基幹システム「KIZUNA-X」

テレワーク導入で強化した社内コミュニケーション

――コロナ下においては、テレワークも推進されました。

 本社機能のほとんどをテレワークに切り替えたことに加え、現場管理を行う社員も直行直帰に変更し、社員同士の接触機会を軽減しています。現場においては、マスク着用はもちろんソーシャルディスタンスの確保、手指消毒やドアハンドルなどの消毒、換気、時差対応など、感染対策を徹底しています。

建設現場におけるコロナ対策
建設現場におけるコロナ対策

 現場管理の社員が事務所の不在期間が増えることで、正確な情報共有の場が失われました。そのため、EDI(電子データ交換)機能の一部を利用し、社外の業者に会社からの共通指示を伝達しました。業者の混乱を未然に予防したことで、監督たちがストレスなく現場管理に集中できました。

 また、電子取引を採用していることで経理部門業務も在宅勤務において、平時と同様の成果を出すことができました。

 KIZUNA-X の機能をフル活用することで、事務所作業の90%以上の業務がどこにいてもできることを気付けた、良い機会でもありました。

――テレワークを実行する上で困ったことはありましたか。

 社員のモチベーション維持ですね。会う機会が極端に減ることで、不安に感じるスタッフも出てきます。そこで、オンラインミーティングを頻繁に行いました。各グループ長はもちろん、拠点ごとになるべく話せる機会を持つことで、オンライン上であっても「報連相」を徹底しています。

 お客様との接点が最も多い若いスタッフは情報もたくさんもっています。そうした情報をきちんと上司が汲み取ることで、リスクを回避できたり、新たなサービスを生み出せたりする。そのためにも相談しやすい環境を作っておくことは重要です。スタッフの声を聞き取り、問題があればアドバイスをする。それをきちんと繰り返すことで、一定の成果は必ずでます。コロナ禍でも通常時と変わらない仕事ができたことは、こうした関係づくりが大きかったと思っています。

――テレワークを始めたことで、気づきなどもありましたか。

 無駄がへりました。基本的に社員は週1度の事務所勤務をお願いしており、それ以外は現場への直行直帰、在宅勤務などになっています。事務所に来るのは1日ですから、その時にやらなければいけない仕事を効率的にこなす。計画性のある働き方ができたのは一番の収穫でした。

 こうした働き方の変化は現場監督も同様で、コロナ前は帰宅時間が遅くなることが多かったのですが、この部分を改善できました。時短勤務にもつながったことは大きかったですね。

――現場以外でも仕事効率化につながった部分があるんですね。

 建材の発注が前もって終わっていたこと、渉外チームが必要な量を手配できたことなどから、通常通りの工期を実現できましたが、加えて支払いに電子取引を採用したことで、経理部門の勤務も改善されました。

 当時は現場がストップしたり、数が極端に減ってしまうことで、不安を覚える職人の方もいたと思いますが、感染対策をした上で現場を動かせたこと、遅れることなく支払いができたことなどから、仕事を請け負ってくれる職人の方も増えています。

――他社より先んじて市場の変化を読み取り、先手を打って対策チームも設置した。これだけ早く動けた理由は。

 社風として、最悪を想定して動くという考え方があり、それが今回生きたと思っています。今後はKIZUNA-Xの活用の幅をさらに広げたいと思っており、現場と事務所をつなぐだけでなく、お客様にも開放することで、自宅が建設されていく様子をみたり、お客様と現場をつなぐツールにしていく予定です。

 ただ、KIZUNA-Xはあくまでもシステムです。それを使っているのは社員たち。ここまで使いこなせているのは、部署間の連携が大きいと思いますし、そこはオープンハウス・アーキテクトの自慢できる部分です。各部署が連携し、全員が同じゴールを見据えて仕事に取り組める。そうした社員一丸となった思いが、コロナ禍という危機においても平常時と同じパフォーマンスを上げられた理由だと思っています。

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