とはいえ、日本のフードデリバリー市場は「多様なおいしさを提供しきれていない」「日常利用しやすい安さとは言えない」「店舗がエンパワーメントされづらい仕組み」という3つの問題があると指摘。Chompyはこれらの課題を解決することで市場を創出し、シェアを取っていくと大見社長は語る。
「1つめの『多様なおいしさ』について、本来ネットは幅広いお店、地方の小さい個店にもスポットが当たるソリューションだが、アプリを開くとナショナルチェーンがファーストビューに出てくるのが現状だ。2つめの『高い』については、日本は配達人件費が高く、1回あたり750円くらいほどかかってしまう。飲食店も店頭価格のままではなく手数料を乗せるため、すごく割高感が強い。3つめは顧客に直接関わることではないが、飲食店はお客様に喜んでもらうことに喜びを持っている。一方でフードデリバリーはお客様の表情や顔、個人情報が見えないまま食べ物を提供する仕組みのため、飲食店の方がやりたいと思っている『お客様との接点作り』が大きな課題になる」(大見社長)
1つめの課題については、「個店を中心に多様で魅力的なラインアップをそろえる」と大見社長はアピールする。
「オープンベータ期間中に申し込みをたくさんいただいたが、審査制を設けており、結果的に3割くらいしか掲載に至っていない。クラウドキッチンやゴーストレストラン(デリバリー専業ビジネスモデル)で屋号をコロコロ変えているところもあり、こうしたお店が増えてしまうとユーザー満足度が下がってしまうので、厳選している。加盟店数が増えればUX(ユーザー体験)が上がるという構造を守っていくことを最重要視している。店舗数が100店舗以上増えると大変だが、どうお店の魅力やこだわりを見せてマッチングするか。ブランドストーリーやアピールポイントを記載する余白を用意しており、多種多様なマッチングが生まれるように検索を含めた導線も工夫している」(大見社長)
2つめの課題である「安さ」についてだが、飲食店側の手数料は税込み30%となっている。
「飲食店の手数料は日本が一番高く、英米でも20%台後半で、中国インドは20%前後。日本はUber Eatsが38%、出前館が33%と、平均35%の高い水準になっている。Chompyは30%にセンターピンを置いて事業運営していく」(大見社長)
送料は1注文あたり300円の固定だが、これを無料にする方法も提供する。事前に注文してまとめて配達することで送料無料で購入できる「らくとく便」などがそれだ。
らくとく便は、10時59分までに注文すれば12時〜12時半に、17時59分までに注文すれば19時〜19時半までに届くだけでなく、何店舗注文しても送料無料で届くというもの。店舗と注文者の間に中継地点を置いて配送する「ハブ&スポーク型」にすることで、物流コストを下げる仕組みだ。
「現在は基本的に1注文1配達で利便性に特化した仕組みだが、日本の人件費や所得格差状況からすると、これで高い利便性を実現するのが多くのユーザーにとってベストではない。例えば生鮮ネットスーパーと生協の場合、利便性は生鮮ネットスーパーの方が明らかに高いが、市場規模やユーザー満足度は生協の方が高い。ユーザーにとって『早く届くとうれしい』ことはあるものの、利便性の裏には『受け渡しがおっくう』とか、『注文のタイミングを考えないとならない』という不便がある」(大見社長)
昼時にランチを食べるためには、通常なら配送時間を考えて注文しなければならないが、らくとく便だと空いた時間に注文ができる。
「例えば出社したタイミングでまとめて注文すると、お弁当が会社にごそっと届く。食堂代わりに使うシーンなどを想定している。家庭の場合、お肉屋さんのコロッケとサラダ屋さんのサラダ、副菜は街の総菜屋の総菜を頼んでも無料で届くというメリットがあり、かなり今後の成長を期待できる」(大見社長)
2つめの施策としては、8月11日から東急百貨店との実証実験もスタートする。渋谷スクランブルスクエア ショップ&レストラン内にある「東急フードショーエッジ」の19店舗が参画し、それらの店舗であれば何店舗でも1回分の送料で注文できるというもの。1回分の送料で複数店舗をまたいで購入できるようにすることで、客単価をアップする狙いだ。
3つめは、複数人で注文することで送料を無料にできる「グループ注文」機能だ。
「カートURLをシェアすると、他のユーザーがメニューを追加でき、手元のアプリで決済できる。2人以上で注文すると無料になり、4人以上だと5%のキャッシュバックが幹事に付く。従来は幹事がメニューのとりまとめたり購入後にLINE Payなどで割り勘するのも大変だったが、これを解決する」(大見社長)
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