コロナによる自粛期間が一旦終了し、世の中が平常モードに向けて動き始めてしばらく経ちました。不安は残るものの、多くの企業も少しずつ平時に戻しつつある状態かと思います。しかし、この状態で企業の人事・総務担当者の方も悩んでいると思うんですよね。どこまで平時に戻すのか、ウィズコロナ時代のルールやカルチャーをどうするのか。
そのヒントを探るため、弊社メディアのリモート取材で親しくなったテレワーク先進企業、NEC PC/Lenovo Japan社長のデビット・ベネットさん、電脳コラムニストにして外資系企業のカントリーマネージャーでもある村上臣さんとともに、「ウィズコロナ時代のスマートな働き方」をテーマにオンラインでディスカッションしました。
グローバルに活躍されるお二人から伺った、ウィズコロナ期の労務管理や文化醸成に活用できる知見をご紹介します。
自粛期間中に話題になった、いわゆる「ハンコ出社」。書類の押印のために出勤を余儀なくされるのは結局、社長やエグゼクティブ層だったりします。そんな時、「社長だけ出勤させるわけにはいかない!」となるのが忠誠心豊かな日本の企業戦士。結果発生する、忠誠アピール目的の出社を「忖度出社」と呼ぶそうです。しかし、こうした忖度出社こそ、オフィスがウイルスに汚染されるリスクを高めてしまうことになります。
村上さんの会社では、こうした「忖度出社」を抑制するために社員のカードキーをすべて無効化し、オフィスに入れないようにしたそうです。日本の企業戦士の常識も合理的に考えると、何の役にも立たないどころか、害になることさえあるということです。社長自らそれを指摘し、能動的にコントロールしていく姿勢は危機管理や生産性の観点からは今後、重要になっていくと思います。忖度は「される側」からなくさないと、なくなりませんから。
皆さんご存知のとおり、テレワーク下では、肌感覚で得られていた情報が得られません。部下や同僚がどんな顔で仕事をしているのか、悩んでいるのか、楽しそうなのか、遅くまで頑張っているのか、余裕がありそうなのか、そんなことがすべて見えなくなります。そうした状況下でどんなマネジメント、そして評価をしていけばいいか。
重要となるのは「部下を信頼し、部下の成長を助ける」視点を持つこと。成果主義とは、本来、ギリギリ届かないような目標を設定して、部下の能力のストレッチを促すためのものであり、日本で広まった目標管理制度のように「全ての目標が達成されるのが普通」というのはおかしいそうです。
そして達成困難な目標をめざして頑張る部下をどうサポートしてあげるかを考えるのがマネージャーの役割だと。部下の行動が目に見えていない状況において部下を信頼して任せること、その前提となる部下の能力を把握することがテレワーク下でのマネージャーの条件になりそうです。そのためのマネージャー教育の重要性は増していくでしょう。
誰も見ていないと部下はサボってしまうのではないか……と考えるマネージャーもいるかもしれませんが、実際に懸念されるのはその逆、労働の長時間化です。早くから無制限テレワークを導入していたNEC PC/Lenovo Japanでは、テレワーク時に社員の労働時間が長くなる傾向があることにいち早く気づき、メンタルとフィジカルの両軸でのヘルスケアサポートをとりいれているそうです。
オンラインでの、マインドフルネスや、ヨガやワークアウトのプログラムの提供などは、運動不足になりがちなテレワーク下で社員の心身を整えるうえで効果的かと思います。また、テレワークでは仕事が家庭の壁を越えてしまいがちになるため、マネジメント側は業務時間外に部下へメッセージ送信するのは自粛するといった配慮が必要です。
自粛期間が終わり、出勤も再開されている会社も多いと思いますが、一方でテレワークが継続されている会社も、交代制出勤となっている会社もあるかと思います。テレワークでも「意外といける」ことが明らかになった今、オフィスの解約やフロア縮小などを考えている会社も少なくないと聞きます。
とはいえ、リアル出勤でしか得られない価値もあるでしょう。だとすると、テレワークとリアル出勤の頻度はどれくらいが適性なのか。お二人によるとその答えはほぼ出ているそうです。
「人類が共通して望むリアル出勤の回数は週2回」
グローバルな複数の調査で、多くの国では理想の出勤回数は週2回という答えが多数派となっているそうです。もちろんアンケートによって結果は違う場合もあると思いますが、お二人の答えは一致していました。これからは、1週間のうち、リアル出勤2回・テレワーク3回とする企業が就職ランキングの人気企業の上位となるかもしれませんね。
いかがでしたでしょうか。日本におけるテレワークのトップランナーであるエグゼクティブのお二人の率直な言葉から、ウィズコロナ時代に企業の常識となっていくであろうポイントが明らかになったのではないかと思います。
今回は、「テレコラボ」と言いつつコラボの話が薄めとなってしまいましたが、次回はテレコラボ戦略の全体像などについて、しっかりお伝えしたいと思います。
≪第10回に続く≫
角 勝
株式会社フィラメント代表取締役CEO。
関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。
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