今回は、リモート環境下での信頼醸成「リモートトラスト」のための最重要ポイントである「相手の立場を慮るスマートな優しさ」をどう伝えるかについてお話しします。
前回ご紹介した早稲田大学ビジネススクールの入山先生の「リモートで感情を伝えることは難しい」というご発言のとおり、リモート環境下では情緒に関する情報が欠落しがちだと多くの方が感じられているのではないでしょうか。相手の感情が読み取りにくくなりますし、相手もそう感じているでしょう。だからこそ、「相手の立場を慮るスマートな優しさ」が重要となるのです。
今回は、僕がリモート環境下で感情や心の機微を伝え、親近感と信頼の醸成のために心がけていることをTips的にご紹介します。名付けて、僕が考える「リモートコミュニケーションの極意」。今回はビデオコミュニケーション編として7つの極意をご紹介します。
リアルで会っていれば、言葉に加えて、目線の動きや細かいしぐさで自然にこちらの意思が伝わりますが、リモートでは難しくなります。なので、意識して大げさにふるまう必要があります。例えば、カメラに見えるように「それいいね!」と親指を立てる、手をたたく、大げさにうなずくなどです。これは基本中の基本ですね。
ビデオ会議の良いところは、画像情報と並列的にテキストなどの追加情報も送れるところです。例えば、何気なく会話に出た情報を検索してさらっとテキストチャットでURLを送信したりすると「あ、この人は気が利くし仕事が速い」という印象が生まれやすいです。さらに保存もできるように、通常のメッセージングツールやメールでも同じ情報を追加送信してあげたりするとより好印象です。
これは前回の「オンライン上でのアイデンティティの可視化」というトピックにもつながる話ですが、事前に相手の情報を知ることができるのであれば、知っておくことに越したことはないです。ミーティングの前の10分間をその作業にあてるだけでも相手のスタンスや人間性を知ることができます。相手の発言に対する理解の解像度が上がり、より深く共感できるようになります。
自分が相手に興味をもっていることを示すのがコミュニケーション円滑化のポイントなのはリモートでも同じですが、得られる情報が限定されるので、より「気づく力」が重要になります。リモートならではのポイントは「バーチャル背景がいつものと違う」とか「持っているマグカップが素敵」など明らかに画面に映っている・映しているものに着目することが共感の一助になります。ただしプライバシーに関わることや、画面に映っているかどうか微妙な細かいポイントを言い出すと気持ち悪がられることもあるので要注意です。
リモート環境では形成されないのが「空気感」です。空気感とは、複数人の言動や所作や地位などが相互に影響しあって形作られる「集団としての態度」のこと。リモート環境だと空気感は誰にも読めないので、自分が正しいと思うことを素直に主張することで、逆にリアルよりも議論が進みやすくなる効果があります。
基本的にポジティブな感情が伝わると相手方の情緒もポジティブに傾きやすいということは、経営学の過去の研究でも実証されているそうです。なので自分の感情、特にポジティブな感情は積極的に表現するように努めています。いつもより少し口角を上げて笑顔をつくるとか、声に出して笑うとか。相手を褒めるときも具体的なポイントを指摘して褒めるとか。テレワーク時に限らず普段から意識していれば、リアルな対面でも効果を発揮するはずです。
これが一番大事ですが、相手を信頼したい、仲良くしたいと本気で思っていることが一番大事です。これがなければ上記のTipsはすべて空虚なものとなり、相手に見透かされてしまいます。リモートでは「空気感」や雰囲気にごまかされない分、ロジックの破綻はすぐに気づかれてしまいます。とにかく正直であることを心がけましょう。
上記のようなことに気をつけているとリモートを起点として仲良くなれることもたくさんあります。
例えば、僕は「QUMZINE(クムジン)」という自社メディアのリモートインタビューを通じて、NECパーソナルコンピュータ/Lenovo Japan CEOのデビット・ベネットさんと仲良くなり、その後、自社開催のオンラインイベントにもご登壇いただきました。これは僕からオファーしたというよりは、インタビューの後、デビットさんとテキストチャットでお話ししている中で自然と「やろうよ!」という雰囲気になったものです。
実はテキストコミュニケーションでのコツもたくさんありますので次回、お伝えしたいと思います。
≪第8回に続く≫
角 勝
株式会社フィラメント代表取締役CEO。
関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。
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