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KDDI流の「アジャイル開発」で新規ビジネスを創出--3名のキーマンが語る組織作りの本質 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年04月28日 08時00分
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荒本氏:スクラムもアジャイルもそうなのですが、大事なのは練習を続けることなんですよね。野球やサッカーと同じで、ルールブックを読めば誰でもゲームはできますけど、強いチームと弱いチームの違いがある。ルールを理解しただけでは強くなれず、強くになるためには練習して自分のチームならではのプレイの仕方を作り上げていかなければなりません。その練習が実践ですよね。

 だからスクラムについてトレーニングで知識は得られても、それを自社に持ち帰ってすぐにできるかというと、なかなかできません。なので、実践を積み重ねていき、継続的に改善を加えていくしかありません。とはいえ、練習を重ねるにしても正しい知識を持っていないと、目指すところまでの距離・時間が長くなってしまうし、寄り道もしてしまう。我々としては最短距離の正しい道へ導くことができればと思っています。

――つまり、アジャイルやスクラムを自社でチャレンジしてみてうまくいかない場合は、まずKDDI DIGITAL GATEに相談するのがいいと(笑)。

山根氏:はい(笑)。スクラムがうまくいかなかったと言う方によくよく話を聞いてみると、スクラムの手法のみを既存のプロセスに取り入れてみただけとか、実践するメンバーやステークホルダーのマインドセットを変えないままに進めていることが少なくありません。KDDI DIGITAL GATEではユーザーにとって本当に価値のあるものを作るにはどうしたらよいか?という前提に立って、メンバーが自律的にアジャイルを実践することになるため、座学のみでは得ることが難しい活きたアジャイルを身に付けることができます。

KDDI株式会社 経営戦略本部 KDDI DIGITAL GATEセンター長 山根隆行氏
KDDI 経営戦略本部 KDDI DIGITAL GATEセンター長 山根隆行氏

 あと、新しいやり方には学習コストが発生するので、結果が出るまでには時間がかかるという点を認識しておくことが重要ですね。

 そういう意味では、現場が正しいと思うことをチャレンジさせ続けられる度量や忍耐のようなものがマネジメント層にないと、アジャイルを実践していくのは難しいと思います。一方で、現場の人たちもアジャイルをやっていく以上、今自分たちがどういう学習をして、どういう成果が上がっているのか、ちゃんと見えるようにしておく義務があります。上と下の信頼関係があって、透明化できているかどうかが、その会社がアジャイルに適した土壌にあるかを判断するうえで大事なところかと思います。

木暮氏:正しい手法と、マインドはすごく大事ですよね。そして組織が必ずそのルールに沿うとは限らないので、そのときにどうするか、柔軟に適応させられる能力も必要だと思います。またマインドが欠けてしまうと、自分がただしたいことになってしまうし、やり方がわからなければ我流になる。だから正しい手法とマインドの両方が必要であることを理解したうえで、その会社の事情に合わせることが大事です。

 会社によっては、予算取りのときに稟議決裁が必要だったり、報告を毎月上げなければいけなかったりと、いろいろなルールがあります。そこを外してしまっては会社は許してくれません。そういうルールを守りながら、チャレンジできる範囲を自分たちで広げてどんどん改善していく取り組みをしなきゃいけない。組織作りとチーム作りは両輪で回さないといけないですし、それができないとスクラムはうまくいかないのかなと。

――KDDIで2013年にアジャイルやスクラムを始めたとき、組織の体制やマインドはどのような状態でしたか。

木暮氏:当時、クラウドサービス企画開発部長としてGoogleから藤井彰人(現在、執行役員 サービス企画開発本部長)が来て、「うまくいくまでずっとやり続けるから」という度量のもとに、アジャイル企画開発を開始しました。今このように順調に事業が拡大しているのは、それが大きいと思いますね。

山根氏:アジャイル企画開発は、特に新規事業開発においてはグローバルスタンダードな手法であるにも関わらず、日本の企業では採用が少ないですよね。藤井はそういったグローバル企業の中で過ごしてきた人間でしたから、理解があったのだと思います。

 以前のKDDIは技術開発していると言っても、仕様書しか書いていませんでした。あとはスケジュール管理のためのガントチャートを作るだけ。藤井が来てから「これって開発じゃないよね」という話になって、ビジネスと開発のスピードを合わせていくためにはアジャイルと開発の内製が必要だと。それでアジャイル開発センターが立ち上がったわけです。最初5人からスタートして、うまくいくまでは長かったですね。

荒本氏:僕は長いとは感じなかったですけどね(笑)。アジャイルやスクラムの場合、続けていくうちにちょっとずつやり方がうまくなっていく。「こうなったら終わり」というのがないし、どこまでいったらよしとするか、みたいなものもないので、長いとは感じませんでした。

木暮氏:アジャイルに取り組んでいるメンバーが、その開発手法を続けていくにつれてどんどん楽しそうに働くようになっていったのが見えたので、それを見たときには「やって良かったな」と思いましたね。


成功するには組織のリーダーが「ビジョンとゴール」をもつこと

――かつてお三方は、一緒にアジャイルに取り組み、今ではそれぞれ違う立場でアジャイル、スクラムに関わる会社や組織のトップを務めていらっしゃいますが、スタートした当時を振り返って、アジャイルにおける大切なポイントとして何か思い当たることはありますか。

山根氏:このメンバーではないですけど、最初に立ち上げたときのメンバーとは衝突することが多かったですね。答えがない状態だからですね。チームビルディングにおいてタッグマンモデルというものがありますが、そのフレームワークでは、チームが結束力を高めてパフォーマンスを上げる前には必ず混乱期があると。混乱期を経て、言いたいことを言い合える状態になると徐々にパフォーマンスが上がっていく。あのときはまさにカオスでしたが、荒本さんには穏やかに見守っていただきました(笑)。

 当時、僕は企画サイドの人間で、企画と開発の人間って最初に必ずぶつかるんですよね。でも1つのチームとして溶け合っていくためには、互いに言いたいことを言い合って、相手の考え方や大切にしていることを理解してからやっとスタートみたいなところがあると思います。

――アジャイルをやろうとしている企業はどこも同じようなことが起きているんでしょうね。

山根氏:だと思います。それがないと本当の意味でのチームにはならないはずなので。ビジネスと技術が融合して同じベクトルに向かったときに初めてシナジーが生まれるのだと思います。

木暮氏:私の場合、始めるまではアジャイルに関して知識も経験もありませんでした。まずはルールに沿わなければいけないところが以前と一番違ったので、そこが難しかったところですね。中途半端に取り組むと失敗するので、やるならとことんやるべき。その標準についてはScrum Inc. Japanがトレーニングするところでもあります。

 それと、「できない理由を言うな、できるためにどうするかを言え」と上司にはよく言われました。「できない理由」を「できるためにどうするか」に置き換えるようにマネージャー層が改善してあげると、組織もチームも変わってきます。「できない理由を言うな」というのはスクラムに取り組もうとしている人たちにぜひ伝えたいですね。

荒本氏:KDDIの従来の仕事の進め方はウォーターフォールをベースとしたものになっています。1つの開発チームだけで仕事は完結できなくて、社内のいろいろなチームと連携しないといけないけれど、組織全体がウォーターフォールの仕組みで回っている。だから、僕らのチームだけがアジャイルで回しても、部門間で仕事を回していくためには阻害要因や障壁となるものがあります。それを取り除くのが、アジャイルを始めたときに僕がマネージャーとして取り組んで、苦労したところでした。

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 会社のルールは、品質の考え方、開発のプロセス、予算の取り方など、すべてがウォーターフォールベースで作られています。アジャイルチームがアジャイルの良さを発揮するためには、それらを全部アジャイルに向いた方法に変えていかないとだめなんです。そこが難しかったなと思いますね。

――アジャイルのマインドを浸透させていくうえで大切なことは何だと思いますか。

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