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KDDI流の「アジャイル開発」で新規ビジネスを創出--3名のキーマンが語る組織作りの本質 - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2020年04月28日 08時00分
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荒本氏:我々が目的としているのはリーダーや組織のマネジメント層の方々に、アジャイルとはどういう考え方なのか、アジャイルでやるとどういうことが起こるのかを理解してもらうこと。そこからスタートするのが大切だと思っています。リーダーやマネジメント層がそれを理解して、チームがやりたいことをサポートしないと前に進みません。

 従来型の開発、組織構造は階層型でした。上に立つ者が部下に指示・命令していく、仕事のやり方としては一番スローな方法ですよね。チームメンバーはそれぞれ一部分だけを担当していて、隣のチームが何をやっているのかはわからない。なので、自分は自分のミッションをこなせばいい、ということになる。そうするとすべて指示待ちになって、スローな仕事のやり方になってしまう。

 対してスクラムやアジャイルの目指しているところは、フラットな組織です。誰もがどんな情報にもアクセスできるよう透明化されていて、自分たちが全ての情報を把握していれば、自分たちで意志決定できる。指示を受けなくても自分たちで考え行動できる。自分たちで考えて隣のチームと連携できる。階層型の組織では、全体像がわからず一部分の仕事しかしていないため、チームで意志決定ができず、指示を待つしかありません。

木暮氏:ただ、チームだけで解決できない課題もあります。たとえばサービスのプロモーションをするとき、そこに大きな予算がかかっていたとするなら、アジャイルといえどもスケジュールをきっちり守らなければいけません。そういう全体的な調整が必要なところは上の人が判断して、チームがうまく回るようにサポートした方がいい。とにかくマネージャー以上はアジャイルチームが健全に、アクティブに動けるようにサポートし続けること。そういう環境や雰囲気を作ってあげることが大事なので、我々もそこを重視していますね。

――「チーム開発」は将来どのような形に変わっていくでしょうか。

木暮氏:どんどん自動化が進んでいくと思うので、よりメンバーがビジネス寄りの要素を考えていくことが増えていくのかなと。すでにローコード、ノーコードといった開発を可能な限り効率化する手法も話題になってきていますし、AIの台頭もすさまじいものがあります。物を作るというよりは、価値を生み出すというところに取り組む時間が多くなって、より価値が高まるようなチーム開発になっていくと信じています。

山根氏:短期的な視点では人事は変わると思いますね。チーム開発だと評価が難しいんですよ。現在の多階層型の組織階層のままいろんな部署をチームとして扱っても、結局は部門ごとの上司が評価するわけです。自分の部門のミッションに対してチームがどれだけ成果を上げたかという評価と、1人1人がチームにどれだけ貢献したかっていう評価はイコールにならないときもある。そうしたときに、個々人が正当な評価を得られるかどうかはすごく難しい問題です。


 チームで成果を出したときの個々人の評価をどうするか、人事はそこに頭を悩ませていて、考え方を変えなければいけなくなる。チーム開発が主流になってくると、人事に限らず周囲の間接部門の働き方は大きく変わってくるのだと思います。

 また、長期的には、会社と会社のボーダーがなくなっていくと思います。チームという単位になれば、副業で関わることになる人もいるはずです。ある会社のAさんと別の会社のBさん、さらに別の会社のCさんが副業でチームを組んで成果を出したとき、3社の成果でもあり、3人の成果でもあり、個人の成果でもあるということになって、会社という背番号の意味が薄れてしまいます。主要な収入源が複数の会社や組織に分散すれば、会社が単なる自分のラベルの1つになって、希薄になってくる気がします。チーム開発が進めば、いずれはそういう働き方に変わっていくんだろうなと思っています。

――最後にそれぞれの立場から、2020年度以降のビジョンや目標を教えてください。

山根氏:KDDI DIGITAL GATEは物理的にもKDDI本社ビルから離れていますし、お客様からしてもいつものオフィスとは違う空間なんですね。江戸時代でいう出島みたいなものです。だから何か新しいことができるのは当たり前で、大事なのは、出島で培ったノウハウや成果をちゃんと全体の標準として適用させ拡大すること。我々としてはそこに一番力を入れていきます。

 具体的に言うと、たとえばKDDI DIGITAL GATEで何か新しいサービスの種が生まれたとき、それを本社に戻して「あとはよろしく」というのは絶対にうまくいかないパターンなんですね。新規事業って(アイデアを生み出した)人の想いというか、人につくところがどうしてもあると思うんです。人からやるように言われた新規事業でやる気を出せないのは誰でも一緒ですから。

 大事なのは、そこで生まれたやり方や文化、プロセス、サービスやプロダクトをセットにして、そのまま本社に戻して拡大し、事業化していくことなんです。今年度はそれを可能にするための仕組みづくりにチャレンジしていきたいと考えています。

 新規事業が定着して拡大していけばそれは既存事業に変わっていくので、そこで育った人がまた別の新規事業を作って……というように、出島と本社の人財の循環がうまく回っていくと思っています。日本でそれができている企業はまだあまりないのではないでしょうか。

 ジョイントベンチャーをつくって本社から切り離してやるというのはよくありますが、大企業の中で本当の意味で新規事業を生み出すのは難しい。それを可能にするモデルを展開して、「KDDIには新規事業を大企業のなかで生み出し続けることができる組織、プロセスがあるね」と言われるようになるとうれしいですね。

アジャイルの1手法であるスクラムに取り組む3社に話を聞いた

木暮氏:アジャイル開発センターとしては、社内案件を広げていきながらも、お客様との共創ビジネス、これはリカーリングと言っていますけれども、そのビジネスを立ち上げていきたいと思っています。今は日本のほとんどの方が携帯電話、スマートフォンをお持ちですし、その携帯事業以外の新しい価値をお客様と一緒に作りながら、事業として貢献していくのが今年度の目標になりますね。

荒本氏:お客様の会社全体、あるいは一部でも、仕事のやり方をアジャイルに変えていけるような取り組みを続けていきたいと思っています。チームでアジャイルの仕事にしていく動きを広げていくためには、組織をアジャイルな仕組みに変えていく必要があります。マインド面も含めてお客様の組織、仕事のやり方の変革に取り組んでいきます。

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