京急グループが取り組む、未来の「モビリティ×ライフスタイル」のためのアクセラレータープログラム

 朝日インタラクティブでは2月18日、19日の2日間、都内でカンファレンスイベント「CNET Japan Live 2020 企業成長に欠かせないイノベーションの起こし方」を開催した。

 19日には、京浜急行電鉄 新規事業企画室の橋本雄太氏による「鉄道会社がオープンイノベーションで描く『モビリティ×ライフスタイル』の未来像」と題した講演を実施。同社が取り組むアクセラレータープログラム事例とともに、大手企業がオープンイノベーションに取り組む際のヒントも紹介された。

京浜急行電鉄 新規事業企画室の橋本雄太氏
京浜急行電鉄 新規事業企画室の橋本雄太氏

人口減の時代に地域密着型のビジネスをどう成長させるか

 京浜急行電鉄(京急)は、東京都や神奈川県を中心に事業を営む鉄道会社だが、交通事業のみならず、流通事業、不動産事業、レジャー・サービス事業など、生活に関わる幅広い事業を展開している。特徴的なのは地域密着型であること。ほとんどの事業が、品川から三浦半島という狭い地域で集中的に展開されているという。それだけに「沿線の社会構造がどう変わっていくのかによって、経営状況が大きく左右される」と橋本氏は説明する。

 たとえば人口減少も、今沿線が抱える大きな課題のひとつ。「これまで鉄道会社は日本の人口増加を前提に、鉄道を敷いてその沿線に住宅などを作って収益をあげていくという手堅いビジネスモデルを展開してきた。しかし人口が減少に転じた今、従来の事業モデルだけでは今後の成長が見込めない。そこへ新しい風を吹かせるのが、新規事業企画室の取り組み」だという。

 「今後デジタルテクノロジーは、さらにあらゆる産業へと広がっていく。これまでの10年には、紙で読んでいた新聞がデジタルになるなど、アナログだったものがデジタルに置き換わってきたが、これからの10年にはオンラインとオフラインが融合し、不動産やモビリティのようなリアルの領域にも、デジタルテクノロジーがどんどん入り込んでくる」(橋本氏)。

 モビリティの領域でいえば、自動車は今、100年に一度の大変革期を迎えているとも言われる。リアルな世界の“移動”にAIやIoTといったデジタルテクノロジーが組み合わさり、モビリティのサービス化=MaaS(Mobility as a Service)が大きなトレンドになっているのは、ご存じの通りだ。

 橋本氏は講演の中で、トヨタ自動車が年始のCESで発表した「ウーブン・シティ(Woven City)」構想について触れ、「彼らは自動車メーカーを脱して、人の移動全般のサービスを提供する会社になることを宣言。そのために静岡県にスマートシティを作ると発表した。鉄道会社はこれまでずっと街作りをやってきたが、そこに自動車会社も入り込んでくる時代になった」と紹介。「こうした変化にあわせて、鉄道会社も戦い方を変えていかなければならない。人が移動した先には目的があり、あらゆる産業、事業が展開されている。これからはモビリティというインフラを安心安全にオペレーションするだけでなく、その先にどんな新しい価値を提供できるかがポイントになってくる」との考えを示した。

モビリティ業界は大きな変革期を迎えている
モビリティ業界は大きな変革期を迎えている

 トヨタ自動車がソフトバンクとMaaSを手がける新会社MONETを設立したように、モビリティ領域では今、GAFAのようなITのプラットフォーマーやUberやGrabのような新しいプレイヤーの参入が相次いでいる。橋本氏は「移動に関する課題はその地域によっても、使う人によってもまったく異なるので、1つのプラットフォーマーが全市場を独占するのは難しいだろう」と推測する。

 一方で、鉄道会社のようなローカルな事業者が巨大なプラットフォーマーに飲み込まれないためには「彼らといかに協調し、自社の成長につなげていくかという戦略を、今のうちから考えておく必要がある」とも示す。そのためには「自分たちの強みをしっかり認識して磨き上げ、早期にテクノロジーを活用した顧客体験の向上を進めることが大切」(橋本氏)。京急ではオープンイノベーションを、このような新たな時代に生き残っていくための生存戦略として位置づけているという。

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