農林水産省が推進する農業のスマート化--現場のニーズと企業をつなげ - (page 2)

安蔵靖志 藤井涼 (編集部) 坂本純子 (編集部)2020年03月19日 09時00分

農業高校生、農業大学生向けにスマート農業教育を推進

――農家のスマート農業を進める一方で、農業大学生や農業高校生に向けたICT教育も強化しています。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

石田氏:現在、農業関係の教育機関として農業大学校は各道府県に42あり、1学年当たり2000人くらいの学生がいます。就農率も高く、5〜6割の方が農業界に入っている状況です。農業高校は全国に300ほどあり、約8万人(1学年当たり3万人弱)が学んでいます。

 こういった方々に学生の段階で農業に関心を持っていただき、職業として選択していただくのが、農業を持続的な産業にするためにすごく重要だと思っています。

 そこで令和2年度にスタートするのがスマート農業教育推進事業です。スマート農業の教育は、即戦力の人材を育てるという意味もありますが、農業に新しいイメージを持っていただき、関心を持つ人が増えるのではと期待しています。

「学生の段階で農業に関心を持ってもらうことが、農業を持続的な産業にするために重要」(石田氏)
「学生の段階で農業に関心を持ってもらうことが、農業を持続的な産業にするために重要」(石田氏)

――具体的にはどのようなことを行うのでしょうか。

石田氏:全国の教育機関で使えるカリキュラムを作ろうとしています。教育機関の先生でも、スマート農業に対して明るいわけではないので、先生自身が使え、生徒自身が自主学習として使えるコンテンツを作ろうというのがこの事業です。

 国語や数学などと同様に「農業」という教科がありますが、安定的に全国の高校で教えてもらうためには、この農業科の学習指導要領の中でスマート農業に関する学習が位置付けられることが重要です。コンテンツを使うかどうかは学校に任せられますが、農業科のいくつかの科目の中では、学習内容にスマート農業についても取り上げるよう学習内容が充実されました。令和4年度くらいから徐々に教育現場での取り組みが加速していくだろうと思います。

 国語や数学などと同様に「農業」という教科がありますが、その中でAIなどの新技術についても取り上げられることが決まっています。令和3年度くらいから徐々に教育現場での取り組みが加速していくだろうと思います。

――スマート農業技術はどのようなものを取り上げるのでしょうか。

石田氏:基本的にはドローンなど、現在の現場で活用されているものを中心に、農業者として就職された時に即戦力になるための技術を取り上げていくことになると思います。

――現在、農家の方は高齢者が多いと聞きますが、現在の就農者に対するテクノロジーの導入と、学生へのテクノロジーの教育については、どのように切り分けて考えているのでしょうか。

石田氏:おっしゃる通り、農業者も高齢の方がたくさんいらっしゃるので、彼らが使いやすいテクノロジーやシステムは大事です。各事業者も市場としてはそこが大きいので、簡単に使えるという視点を考えてくださっていると思います。先ほどご紹介した技術提案についても、高齢者が使いやすいという視点も含めて整理していこうと考えています。

表谷氏:力仕事などは高齢の方が対応しにくくなるので、そういったニーズに対応する技術も厚めに紹介していくと思います。

――高齢者でもワンタッチで使えるような技術やサービスが整備されていく一方で、スマホネイティブな若い農業者などにはさらに高度なことができるソリューションも出てくるということですね。

石田氏:そうですね。スマート農業には相当最先端なものから、ほんの一歩踏み出すものまであります。先ほど例にした米作りの水管理では、気象データなどさまざまなデータを取得するというのではなく、水位だけ分かるものなどがあります。そういうものなら比較的高齢者でも導入しやすいというか、壁を感じにくいのではないかと思います。一歩を踏み出せるスマート農業を高齢者の方に提案するのも大事です。

――あくまでも、すべての農業者を対象にされるということですね。

石田氏:もちろん、そのようになることを目指しています。

田島氏:すべての農業者が使ってくれるのが理想ですが、牛の行動管理の場合で言えば、センサーを付けて高度な管理をするものから、万歩計のようなごく簡単にセンシングできるものまでいろいろあります。農業者がどこまで求めるのか、どこまでコストをかけられるか、どこまで使いこなせるかで総合的に導入する技術を判断することになります。

石田氏:いきなりフルスペックではなく、手軽に導入できる技術などそろえていかないとなりません。若い人向けに開発して世代交代を待つのではなく、私たちは高齢者にもスマート農業を導入して、まだまだ活躍していただきたいと思っています。

田島氏:シンプルなものを導入するだけでも、今までとは全然違う世界になるはずです。

――現場となる学校は、スマート農業教育に対して積極的なのでしょうか?

石田氏:そうですね。反対という声はこれまで聞いたことはありません。自主的に進めている学校としては、たとえば青森県立名久井農業高等学校は、農業用ドローンを開発する東光鉄工と連携してリンゴやサクランボへの溶液散布による受粉作業実証を行っています。

 岩見沢農業高校ではスマート農業人材育成の取り組みを、モデル事業として実施しています。

 農業大学校としては、宮崎県立農業大学校の事例があります。宮崎県は県全体としてスマート農業への取り組みを進めており、農大の実習用地を活用して民間の技術や先駆的な農業経営体と連携し、農大を最新技術や経営ノウハウなどを習得できる農業研修拠点として整備しています。

――コンテンツはどういった方々が作るのですか?

石田氏:令和2年度予算案が確定した直後のため、現段階では未定です。大学や国の研究機関(農研機構など)の研究者、行政担当者、民間企業などの連携が重要と考えます。

――学校には新しいテクノロジーを導入するだけの予算を確保することが難しい場合もあるのではないでしょうか。特にスマート農業の実験圃場を作るなど、大がかりな場合は大変になりそうです。

石田氏:徐々にスマート農業を手がける農業者が増えていますので、無理に高校の中にスマート農場を設けなくても、近くにスマート農業者がいたらそこで学ぶという手はあります。技術は日進月歩の世界なので、多分校内で持つというよりは常に新技術を導入するような農業者のところで学ぶ形を採る方がいいですし、それによって施設整備に関する問題は解決できると思います。

 現在、全国で実証事業を進めていますので、教育機関の先生方にもぜひそういう場に来てほしいとお声がけしています。今後も実証事業、あるいはすでに経営の中で取り組まれている農業者と高校をうまくつなげていきたいですね。

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