――サービスやツールの開発はどのように進めているのですか。
浜田氏:住宅ローンはとにかくわかりづらいと言われることが多いので、わかりにくさを解消できるようなもの、住宅ローンを組む際に生じる面倒な部分を解消できるようなものを常に考えています。もっと便利にするにはどうするべきかを考え続け、今度は不動産会社を始めることにしました。
仲介業を手掛けるつもりですが、この事業で儲けようとは考えていません。ただ、実際に自分たちで不動産仲介業をやってみることで、仕事内容の大変さ、不便さに気づけると思います。不動産会社はアルヒのお客様ですから、お客様が困っていること知るためには、一度やってみるのが一番いいだろうと。
宮脇氏:私たちが開発したツールは使いにくくないか、欲しい機能はなんなのかという実験場としてやる意味合いが強いですね。
浜田氏:実際に不動産業に取り組むことで、なんでこんな当たり前のことに気づかなかったんだろうという気づきはたくさん出てくると思います。
――海外の不動産テック企業でも仲介業を手がける会社が住宅ローン領域までカバーしてきたりと、領域を超えた取り組みが見られていますし、面白い展開ですね。
宮脇氏:日本では金融会社は不動産業に手を出さない傾向にありますが、その2つを結ぶことで解決すべき課題は多い。両者に橋を架けられるのはアルヒだけだと思っています。
――今後の事業展開も大きな動きがありそうですね。
浜田氏:家探しの入り口となる住宅ポータルサイトなども取り組んでいきたいですね。今は、電鉄会社や駅、間取りなどを選んでいくとリストが表示される仕組みですが、やっていくうちにどこをチェックしたかワケがわからなくなる。そうした条件ではなくて、趣味や過去に住んだ物件を元に新居を見つけてくれるポータルサイトがあってもいいですよね。
本当に住みやすい街、家というのは条件だけではわかりません。アルヒでは「本当に住みやすい街大賞」を毎年発表しているんですが、最新版では埼玉県の川口が第1位に選ばれました。これは、住環境、交通利便、教育環境、コストパフォーマンス、発展性の5つの基準から選定しており、住宅ローンの実績データも加味しています。
住みたい街はある程度予想がつきますが、住みやすい街というのはなかなかみえづらいもので、ここをきちんとピックアップできるのはアルヒならではの強みだと思っています。
――不動産の本質は目に見えづらいものですが、そこを見える化するのは面白いですね。そのほかになにか構想はありますか。
浜田氏:ARUHIタスカルやホークアイなど、住宅ローンの複雑な部分をテックの力で変えてきましたが、もっと簡単にするためにスマートスピーカーの活用を考えています。例えば、自分のIDと年収を伝えると、借りられる金額を答えてくれて、次に最寄り駅を伝えるとその金額で購入できる件数をピックアップ、それに間取りなどの条件を伝えて絞り込み、最後はそのリストをメールしてくれるなど、パッと欲しい家が探せて、さらに不動産会社につなげる仕組みをつくりたいと思っています。
しゃべって、見て、ボタンを押すだけで家探しができる。そういう仕組を早くつくりたいと思っています。アルヒの収益源は金融ですが、いずれはテックビジネスで半分くらいの利益を上げるようになりたいと考えています。
森ビルJリートの投資開発部長として不動産売買とIR業務を統括するとともに、地方拠点Jリートの上場に参画。太陽光パネルメーカーCFO、三菱商事合弁の太陽光ファンド運用会社CEOを歴任。クロージング実績は不動産や太陽光等にて3500億円以上。2016年に不動産テックに関するシステム開発やコンサル事業等を行なうリマールエステートを起業。日本初の不動産テック業界マップを発表するとともに、不動産テックに関するセミナー等を開催するほか、不動産会社やIT企業に対してコンサルティングを実施。自社においても不動産売買支援クラウド「キマール」を展開。2018年、不動産テック協会の代表理事に就任。早稲田大学法学部を卒業後、政治学修士、経営学修士を取得。コロンビア大学院(CIPA)、ニューヨーク大学院(NYUW)にて客員研究員を歴任。
大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。
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