AppleのARスマートフォン戦略では、GoogleのTangoで使うような先進的な深度センサー付きのカメラは採用せず、通常のスマートフォンのカメラと、モーションセンサー、プロセッサーのグラフィック処理能力を使ってARを実現する。筆者は、「iPhone」を通して本物のテーブルの上に仮想的なランプが置いてあるところを見て、品質に納得した。iOS 11と一緒にARKitがリリースされると、筆者は仮想的なIKEAの家具を地下鉄のプラットフォームに置いたりしてみたが、その様は驚きだった。
AppleはすぐにARをiPhone、「iPad」のキラーアプリとして取り込んだ。一方Googleは、幅広いAndroidスマートフォンを対象とした独自のARプラットフォーム「ARCore」の立ち上げに動いた。
にわかに、オブジェクトを現実世界にスーパーインポーズできるスマートフォンが急増した。その結果、奇妙なミニチュアゴルフゲームや、星座発見アプリ、大量の計測ツールや家具ショッピングツールなどをはじめとする、新機軸のアプリが数多く登場し、すぐに姿を消した。ゴーグルこそ出回らなかったものの、その事態の流れは、数年前にVRヘッドセットやスマートフォンで起こったことのAR版だった。
しかし、大きな違いが1つあった。ARの仕組みの中心には、現実世界の空間認識技術があり、これは初期のVRにはなかったものだった。カメラとコンピュータービジョンを使ったこの空間の魔術は、多くの技術分野に応用可能で、これには顔のスキャンや、自動運転車、ドローン、防犯カメラなども含まれる。
原作が出版されてから7年経ったこの年、スティーブン・スピルバーグ監督の手によって「レディ・プレイヤー1」(訳注:前編で紹介したとおり、日本語版の原作小説は「ゲームウォーズ」のタイトルで出版されている)が映画化された。しかし現実世界の方は当時とは変わり、今やVRヘッドセットや野心的なスマートグラスが世の中に溢れ、Oculusの創業者Luckey氏はFacebookから追い出され、国境監視技術に取り組んでいるという世界になった。Facebookの「Oculus Go」と、Google Daydream互換のレノボのVRヘッドセット「Mirage Solo」は、スマートフォンとの接続が要らない、自己完結型のヘッドセットになった。単体で利用可能で、小型化され、価格も安くなったにもかかわらず、多くの人はこれらの小さなゴーグルを買う必要を感じず、2045年のオハイオ州コロンバスを舞台とした「レディ・プレイヤー1」に出てくる触覚フィードバック付きのベストと比べれば、さほどクールでもなかった。
もっと凄いものはないのか?このイカレた未来はいつ実現するのか?そんな中、Magic Leapのミステリアスな複合現実ヘッドセットが、壮大なビジョンを掲げて登場した。そのスチームパンク的なゴーグルのデザインは、別の惑星から襲来したかのようだった。とんでもない額の時価総額を誇るこのスタートアップは、これまで筆者が試してきたデバイスを時代遅れにするような、奇跡的な製品を実現できるのだろうか?
2018年の夏、筆者はついにMagic Leapの本社を訪問し、同社の最初のヘッドセットを試す機会を手に入れた。ところがそれは、MicrosoftのHoloLensよりは優れていたものの、それほど大きな違いはなかった。ハードウェアとしてはガッカリさせられたと言わざるを得ない。しかしそのビジョンは魅力的なものになり得るかもしれない。筆者や同僚が見せられたいくつかのアプリは、ニューヨークで開催されたTribeca Art Festivalで見た、実験的没入体験に迫るものだった。空中で手を振ると、シガー・ロスのサウンドトラックに合わせて、光の粒子が踊った。Magic Leapが開発中の「デジタルヒューマン」である「Mica」の部屋では、テーブルの反対側に座る彼女と言葉を使わずにコミュニケーションを取った。それは、時にはアートのように感じられたが、時にはまだ準備が不十分なプロトタイプのようにも感じられた。
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