ある意味、SFの世界であれこれと予言されてきた未来は、既に到来しているとも言える。人の遺伝子改変、コンピューターとの対話、林の中を走り抜けたり後方宙返りしたりするロボットなどはもう現実だ。
だが、2020年から始まる10年間で、私たちはもっと先の世界に足を踏み入れ、脳をコンピューターにつなぐといった途方もない概念までも真剣に議論することになるだろう。
2017年に出版された「The Driver in the Driverless Car」の著者Vivek Wadhwa氏は、主要な先進技術が2030年までには一般的に使われるようになっていると予測している。今はまだ完成に至っていない空飛ぶ自動車、人にかざすだけで診断ができるメディカルトライコーダー、バイオニック外骨格スーツ、無限のクリーンエネルギーなどだ。
「普及までに時間がかかる技術もあるだろうが、実用化することは間違いない。2020年代は、夢のようなテクノロジーがやっと実現する10年になる」、とWadhwa氏は言う。
2019年は、SF映画「ブレードランナー」の舞台に設定された年だった。その2019年が過ぎた今、次の10年でどんなことが起きるのか、詳しく見てみることにしよう。
アニメ「宇宙家族ジェットソン」のジョージ・ジェットソンや、ブレードランナーのリック・デッカードが好んで使う通勤手段が間もなく登場するという予測は、いったん未来派の見込み違いで終わったが、今また注目が集まっている。街なかを飛び回ることの障害になっているのは、もはや技術ではなく、法律やロジスティクスだ。既にたくさんの小さな会社が空飛ぶ自動車を製造しているが、そのほとんどはパイロットの免許が必要で、費用もヘリコプター並みに高い。空中自動車が、「プリウス」のような、今のドライバーたちの愛車に取って代わるまでに至っていないのは、そのためだ。
私たちの身近に登場しそうなのは、おそらく空飛ぶタクシーのシステムだろう。Uberは、小型の電気式VTOL(垂直離着陸)車を使って、2023年には一部の都市で限定的なフライトシェアリングを試験運用したいとしている。
自動運転車の未来は、はるかに早く到来する。Teslaの車は、既に自動駐車機能を備え、幹線道路でハンドルを預けることができる。完全な自動運転ではないが、そこまでは始まっているということだ。他の自動車メーカー数社も、今後数年間でそこまで追いつき、2020年代の中頃までには完全自動運転にこぎ着けることを目指している。Appleが、拡張現実(AR)もしくは何らかのスマートディスプレイを搭載する自動運転の電気自動車を、2025年までにコンセプト化するのではないか、といううわさもあるくらいだ。
一方、エンジニアであり発明家でもある、元British Telecomの「未来学者」Ian Pearson氏は、自動運転車の行く末を違う形で予想している。
「自動運転車については、2020年代に衝撃的なことが起こるだろう」。Pearson氏はそう語る。
同氏が思い描いているのは、街の中心部では個人の車が禁止され、電気式の「ポッド」(個人用高速輸送システムと呼ばれることもある)が優先されるという状況だ。ポッドは、廉価で基本機能しかなく、どちらかというとゴルフ場の屋根付き大型カートに似ていて、指定された路上を、搭乗者のスマートフォン制御で走る。
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