2010年では、バッテリー持続時間のベンチマークテスト結果が5〜6時間であれば良しとされていた。実際にはベンチマークよりも短いのが常だった。バッテリー技術は当時より進歩し、CPUとチップセットの性能やシステムソフトウェアによる電力管理技術も向上した。現在のPCのバッテリー持続時間は10年前の倍だ。
2010年のノートPCのデザインを見ると、ポート類がいかに無骨だったかに驚かされる。たとえばAlienwareのゲーミングノート「M11x」を見てみよう。このPCの謳い文句は、「11インチの筐体に15インチノートPCのグラフィックス性能」だ。実際にコンパクトなのだが、筐体の左側面は多数のポートで埋まっている。VGA、HDMI、ディスプレイポート、フルサイズのEthernet、USB、IEEE 1394などだ。現在のPCは、これらの代わりに1〜2個のUSB Type-Cポートがあるだけだ。
10年前は、ソフトウェアは箱入りで販売されており、クラウドストレージはちょっとしたおまけにすぎなかった。Microsoftの「Office 365」の登場は2011年で、「OneDrive」は2014年まで「SkyDrive」と呼ばれていた。当時、インターネットの接続速度はクラウドベースの操作を実用的にするには不十分だった。
至る所で無線接続が使えるようになり、さらに高速化したお陰で、クラウドはもはやただの好奇心の対象ではなくなった。同様に、ウェブベースのサービスが箱入りソフトウェアの残りを排除していった。この傾向は、PC業界で最も重要な企業とみなされるMicrosoftで加速していった。
この変化がノートPCに及ぼした影響は2つある。まず、必要なストレージ容量が劇的に減り、ほとんどのミッドレンジPCにとって、ストレージは128GBのSSDで十分になった。次に、Wi-Fi規格が進化したことで、無線接続オプションが改善された。今後、ArmベースのPCと5Gモバイルネットワークが主流になれば、セルラー接続は急速に進化するだろう。
ソフトウェアでのもう1つの大きな流れは、OSアップデートの変化だ。OSアップデートはかつては有料だったが、現在は無料だ。Appleは2013年に「OS X」のアップグレードを無料にし、Microsoftは2015年に「Windows 10」のリリースでこれに続いた。その結果、PCの耐用年数が、それまでOSのメジャーアップデート間隔に当たる3〜4年から、それをはるかに超える年数になった。
実際、PC市場で最も興味深い発展の1つは、この流れの論理的拡張、つまり、PCを所有することに代わるハードウェアのサブスクリプションサービスだ。Microsoft版のサービスは「Surface All Access for Business」というものだ。だが、Dellの「PC as a Service(PCaaS) for Business」の方がこのコンセプトをより純粋に体現している。いずれのプランも、前払い料金なしで、1台当たりの月額料金で新しいPCをリースでき、36カ月または48カ月後に新しいPCと交換できる。Dellのプランでは、Dellがすべての設定を行い、リース期間を終えたPCはデータを安全に削除した上でリサイクルする。
AppleがiPadを発売する直前の2010年初頭では、PCというものは消費者がショッピングやニュースのチェックなどの一般的なオンライン作業をするために購入するものだった。だが、PCの消費者市場はほぼなくなり、主にビジネス向けPCにフォーカスしていた3社、HP、Dell、レノボが出荷台数と売上高のシェアを伸ばした。東芝など、かつては最も興味深いデザインのPCを世に送り出していた企業は市場から撤退した。
この10年間にPCメーカーの仲間入りした大物には驚かされたし、その実績は激動だった。Microsoftが2012年にオリジナルハードウェアの「Surface RT」と「Surface Pro」を発表したのは大きな動きだった。Surface RTの失敗は費用のかかった黒歴史だが、Surfaceシリーズの持続性と最終的な成功により、Surfaceブランドは10億ドル規模になった。これは、Microsoftの他の分野での粘り強さを見たことがない人々にとって、驚くべきことだった。
だが、この10年で最も驚くべきことは、恐らくAppleの運命の変化だろう。同社はMacBook Airという、新たなカテゴリーを定義する画期的なデバイスを送り出したが、どこかの時点でMacから注意をそらしたようだ。今のMacは、ハードウェアは魅力に欠け、キーボードには不具合があり、OSはバグが多い。
10年前に死んだのは、PCではなくMacだったのかもしれない。いずれにせよ、今後10年間でPCがどうなっていくかを見ていよう。PCがすぐに消えていくことはなさそうだから。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手