Appleは11月13日、これまで15インチのディスプレイを備えていたMacBook Proを刷新し、16インチMacBook Proとしてデビューさせた。15インチモデルは販売終了となり、今後は新しい16インチモデルとして継続していくことになる。
Appleはボディのデザインこそ大きな変更を加えなかったが、内部構造やMacの要となるキーボードを刷新し、仕事の道具として活用するクリエイティブプロやエンジニアの声を反映している。
ポイントとなるのは熱設計の大幅な改良で、今回搭載した第9世代Intel CoreプロセッサにおいてはTurbo Boostの最大クロック発生持続時間をより長くする効果があり、今後は熱設計で処理性能が左右される第10世代Intel Coreプロセッサに向けて、余裕を持たせている点だ。
また米国では2399ドルに据え置かれた6コアInte Core i7とAMD Radeon Pro 5300Mを備えるベースモデルが、日本では24万8800円と値下げされ、消費税が10%になってもなおこれまでの15インチのベースモデルより安く手に入るようになった。
大きくなったディスプレイと高速なパフォーマンス、グラフィックスは、見方を変えれば、より長く仕事の第一線で使い続けられることを意味し、クリエイティブやエンジニアリング分野に加え、ビジネス向けでも検討すべき一台になった。
今回AppleがMacBook Proを再設計する際、16インチというこれまでよりも大きなRetinaディスプレイを、できるだけボディサイズ拡大を抑えて搭載すべく、ディスプレイの周囲の額縁部分、ベゼルを小さくした。これはスマートフォンやタブレットでも行われてきた手法だ。
こうしてわずかに拡大したボディは、これまでのMacBook Proと同様、左右2つずつのThunderbolt 3ポートとイヤホンジャックのみを備えるデザインは維持された。その上で再設計されたのは、目に見えない内部の排熱性能だった。ヒートシンクを35%拡大し、ファンの羽の数を増やして28%通気量を向上させるなどの改善を行ったという。熱によってパフォーマンスが制限されにくいプラットホームを手に入れた。
グラフィックスとして採用されたAMD Radeon Pro 5000Mシリーズは、ベースモデルに採用される5300Mでも、これまでの最大仕様だったRadeon Pro Vega20グラフィックスより1.8倍高速に動作する。
実際、MacBook Pro 16インチモデルの2.4GHz 8コアIntel Core i9プロセッサ、64GBメモリ、Radeon Pro 5500Mと8GBのビデオメモリを備えるマシン単体で、ファンを回さず、Final Cut Proの8Kビデオ編集をこなしていた点は、Appleがこの新モデルで何を目指しているのかが明確に分かるデモだったと言える。
その一方で、パフォーマンスを左右する2つのリミッターにぶつかったことも明らかとなった。それはバッテリーと電源である。
米国連邦航空局(FAA)は、飛行機内に持ち込めるバッテリー最大容量を100Whと定めている。今回16インチモデルのMacBook Proには、その上限である100Whが搭載され、これまでより長い11時間のウェブブラウジング・映画視聴時間を確保した。
しかしこれ以上の容量拡大は、飛行機移動を不可能にし、クリエイティブプロのモバイルへのニーズを満たせなくなってしまうことになる。
そして電源もまた上限にぶつかった。現在MacBook Proシリーズ、MacBook Airは、USB-C/Thunderbolt 3ポートを介したUSB Power Delivery(PD)を用いて充電している。この規格上の上限は100Wで、今回のMacBook Pro 16インチに付属するACアダプタは上限に近い96Wのものが付属してくる。
つまり、これ以上電源を必要とするシステム構成を実現するには、USB-PD規格以外の給電方法の採用を伴い、加えて長らくAppleが基準としてきた10時間のバッテリー持続時間を諦める必要が出てくる。
もちろんプロセッサやグラフィックスが際限なく消費電力を拡大させているわけではなく、同じ電力でより高いパフォーマンスを追求するために微細化などを行ってきた。それでも、単純な拡大によって電源・電力を確保することはこれ以上できなくなった点から考えると、今後のMacBook Proの発展は、今回設定された制限の中で最大限にパフォーマンスを伸ばしていきながら、次のアーキテクチャの模索を開始する局面にあることが分かる。
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