そもそも人類にとって食とはなにか。生存するための栄養補給なのか、あるいは文化的な食事をするためなのか。「極地へ半年ほど滞在するような人の話では、栄養補給のみを目的とした人工的な食事のことを“餌”と表現していて、そういった“餌”ばかりを食べ続けるとネガティブ思考になり人間がダメになり、逆にたとえば料理が下手な人が食べてくれる人のために頑張って作った料理を食べると、チームワークが生まれ、仲間意識が芽生えるとされている。誰かが頑張って作り、自分たちが贅沢できることが最高の食事とその方は話していて、料理、食事はコミュニケーションが生まれる場なので、それをどう捉えるかが重要」と住氏は語る。
料理への根源的な欲求は、おいしい・安い・簡単・時短の4つ。これがスマート化されることで持続可能性やパーソナライズ化、健康的、信頼性といった、食の欲求満たされると、より高次元な価値を求めていく。どうしたらユーザーの課題を解決できるのかがスマートキッチンの重要なポイントだ。
これまでは、家電メーカーが考えるスマートキッチンは多種多様な同じメーカーの家電が何でもつながるという垂直統合が強かった。しかし、今年はその傾向は少なくなってきている。その理由は、ユーザーが家電メーカーの作る製品をすべて同じメーカーで揃えることはあまりないからだ。代わりに冷蔵庫をもっと便利にするために食材を購入するペインを解決したり、オーブンやコンロが様々なプロの焼き加減を再生してくれるなど、一つの家電の体験を最高にするという一点突破型にシフトしているという。
また、企業間のアライアンスは、すごく進んでいるという。一人で歩き続けるのは限界で、ほとんどの家電メーカーは、レシピ会社と提携したり買収したり、あるいはECの食材系とつながっていると話した。
その理由として住氏は「スマートキッチンの落とし穴として、製品を購入するとついてくるレシピ本が無駄になっている点が挙げられる。ユーザーは家電が使いたいからレシピ本を使うというわけではなく、いまある食材で料理を作りたいからレシピ本を見たい。この矛盾は、メーカーは多額のコストを使ってレシピ本を作るが、ユーザーは日常見てくれないのでせっかく良い高度な家電を使ってもユーザーは使いこなせないという問題が発生している」。
家電メーカーはIoT化することによって、物売りから事売りにしたいと思っている。ただ家電メーカー自身がサービスを作ると、家電に閉じたサービスになってしまうため、ユーザーには使いにくいものになってしまう。そのため、家電の外でも使える大きなサービスを作ることにチャレンジするか、もしくは既存サービスと組むことになる。
レシピサービス側からとしては、実際にユーザーが何の料理を作っているか、何の食材を今持っているのか等の情報がわからないため、家電とつながりたいと思っているとのこと。食材を管理できる冷蔵庫メーカーやカメラを入れるなどするところとつながることで、いろいろな課題が解決できるとした。家電だけでなく、販売店や食品メーカーなどと組んで、ユーザーによりよい料理体験を提供していきたい。「クックパッドもアライアンスしていかないといけない」住氏は語った。
キッチンがスマート化していくなかで、クックパッドがどのようにアプローチすべきか、ということでスマートキッチン事業部を起ち上げている。クックパッドは累計レシピ数が約310万品登録されており、月次利用者数は約5400万人に上る。日本だけでなく海外展開も行っており、30言語73カ国で月次利用者数が約3800万人、累計レシピ数は280万品登録されている。日本に匹敵するぐらいグローバルな規模になってきており、目標は世界100カ国でナンバー1を目指すという。
そんなクックパッドは、スマートキッチンサービス「OiCy」を発表し、パートナー企業と連携したサービスの実用化を目指している。パナソニックが展開する一人ひとりに寄り添ったきめ細かな生活提案を行うプラットフォーム「HomeX」もその1つで、戦略的パートナーとして共同開発を行っている。
OiCyのモットーは、「世界中のひとりひとりに、自分の“おいしい”を自分でつくれる感動を届けたい」ということ。スマートキッチンとは言うものの、簡単にしたいとか、自動化したいのではなく、一人ひとりにおいしいを届けていくとした。
今までのクックパッドは、ごく少数のレシピ作者が投稿したレシピを、投稿しない大多数のユーザーが利用するというモデルになっている。だが、投稿しないユーザーもそのままレシピ通り作っているわけではなく、味つけや食材を変えて工夫をして料理をしているが、それは誰にも伝わらないのが実態だ。だが、今後スマートキッチンが普及してくると、火加減や味付けなどスマート家電と連動する部分はより正確にレシピ作者の意図を再生することもできるし、料理をするユーザーが変更した好みも自動的に記録されるようになる。つまり、さまざまな人の多種多様な好みやアイデアが理論上は家庭の数の分だけ生まれ、人々に伝わる世界が来る。
住氏は「現在、クックパッドは世界中に1億人のアクティブユーザーがいるが、将来の到達点としてはOiCyは全人類の日常料理の課題を解決し、一人ひとり違う、自分のおいしいを作り、コミュニケーションしていくという世界観を目指している。将来的には、ECと食材を何かを売ったり、食品メーカーとおいしい食材を届ける、ユーザーのニーズに合わせた製品づくりを提案していきたい」と豊富を語った。
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