“クラウドゲーム”が最近よく話題に上ります。
“クラウドゲーム”というキーワード自体は、決して新しい概念ではありませんし、目新しくもありません。2005年前後から、今日までの間、業界内では常に継続的な動きがあり、地道に発展してきた分野でもあります。
そもそも、クラウドゲームとはいったいどういうものなのでしょうか?『ファミ通ゲーム白書2019』においては、「インタラクティブ性のあるゲームにおいて、演算や処理がすべてサーバー側で行われ、ユーザー側の操作結果をストリーミングで配信するタイプの製品及びサービス」と定義されています。
つまり、ゲームコンテンツの本体が、クラウド上にあるゲームということになります。今や、ネットに接続してプレイするゲームは数多くありますが、実は演算は手元のデバイスやPCなどの端末で行い、コミュニティー機能やパーティマッチングだけをネットワークで処理している場合も多いのです。
本来の意味での“クラウドゲーム”とは、主要なゲーム処理がクラウド上で行われ、その結果をストリーム配信するゲームを指すのです。
従来は、ゲーム機上で演算や処理をするため、まずは、ゲーム機をより多く販売し普及させる必要がありました。そこに対してゲームソフトを売っていくわけですから、ゲーム機自体がソフトを動作するプラットフォームだったと言ってよいでしょう。ゲーム機の普及台数とその上でプレイできるソフトの総数、それがゲームマーケットだったのです。
しかし、“クラウドゲーム”に関していうと、このプラットフォームの概念が大きく変わる可能性もあります。ゲームをプレイするためのデバイスを選ばないということは、ゲーム機や端末の上位に位置するプラットフォームであるということを指します。
では改めて、なぜ今になって再度“クラウドゲーム”に脚光が当たっているのでしょう?それは何と言っても、Googleがゲーム業界へ本格参入を宣言し、それがクラウドゲームだったことが大きいです。
その名も“Stadia(ステイディア)”。
Stadiaは、YouTubeやAndroid OS等を傘下に持つGoogleによる大掛かりなクラウドゲームなので、業界内では「ついにGoogleが参入」と大きく騒がれました。
“プラットフォームのプラットフォーム”としてGoogleが躍り出ると、業界の地図は大きく 塗り替えられます。それほど、インパクトは大きかったのです。
5Gはソサエティ5.0とか、我々の生活を変えていくと言われていますが、その半分はローカル5Gネットワークにおける革新で、遠隔医療や高度なテレワーク、スマート農業、無人自動工場等の利用が考えられています。
もう半分は携帯電話等の携帯端末が“超高速、超低遅延、多数同時接続”の直接の恩恵を受けることにあります。
つまり将来的に、圧倒的な数とその利用率を誇る携帯端末が、高度化したネットワークに繋がるということになるのです。現段階におけるクラウド接続によるデメリットは、5Gの誇る“超高速、超低遅延、多数同時接続”によって、瞬く間に解消されることを意味します。
また、既に音楽や映画などの世界では、NetflixやHulu、SpotifyやAmazonプライムといったサブスクリプションプラットフォームがユーザーIDの争奪戦において熾烈な戦いを繰り広げています。
GAFAやFANGと呼ばれる巨大なプラットフォームが、いよいよゲームコンテンツに注目し始めたというのが実情だと思います。
したがって、Googleの参入という象徴的な出来事は、“高度ネットワーク時代の到来”と“IDの争奪戦”の文脈上で見ていくと、いよいよ来たぞという動きでもあるのです。
当然マイクロソフトやアップルも黙ってはいません。xCloudや、Apple Arcadeなどゲームに関するアプローチを一層強めてきました。また、マイクロソフトはクラウド戦略において、ソニーとも手を組みました。
そしてGAFAだけでなく、中国系のBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)もクラウドをベースとした、次世代のプラットフォーム戦略を着々と進めているのです。
・2019年6月:クラウドゲーム市場規模は4年間で約11倍の成長見込み、22年には125億円に到達へ
このように、クラウドゲームは、今後新たなフェーズに突入し、大きく成長していくことが見込まれています。その時に注目すべきは、従来はプラットフォームであったゲーム機や携帯端末、PCといったものが、クラウドゲームの時代には、さらに上位で括りあげるサービスプラットフォームが意味を持ってくるということです。
それこそがクラウドゲームなのです。今後大きく成長するであろうクラウドゲーム・マーケットの成長は、ゲーム業界を まったく別のものに変えてしまうかもしれないのです。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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