朝日インタラクティブは10月30日、フードテックをテーマにしたセミナーイベント「CNET Japan FoodTech Festival 2019 “食”の新世界に挑戦するイノベーターたち」を開催した。
基調講演にはリデン 代表取締役の上原郁磨氏が登壇し、「システム思考×デザイン思考を活用した共創型ビジネスモデルづくりと商品開発手法」と題した講演を行った。
上原氏は新しいサービスを開発するための考え方と、食品の商品開発にあたって新しいものを生み出すための考え方について話した。
上原氏はイノベーションの生み出し方について、「斬新なアイデアじゃないといけないと思うことがあると思うが、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは『今あるものを組み合わせて新しいものを作ること』だと言っている」と語った。
イノベーション(新結合)の事例として、血を止める「絆創膏」と「ドナー登録キット」を組み合わせてドナー登録を推進する取り組みを紹介した。MRI(磁気共鳴画像)検査に入る子供が嫌がらないように、検査機にシールを貼るだけでなく、子供がMRIを通して冒険に行くというストーリーを加えることで、検査スピードが向上したという事例も紹介した。
「技術開発の延長線上以外にも、組み合わせるだけで価値を生み出せるという事例があり、意図的にこういう考え方を生むために、考え方を作るための『デザイン志向』という方法論がある」(上原氏)
デザイン志向という言葉自体の認知は進んでいるものの、企業では約5%程度しか取り込めていない。その背景には「人は見たいものしか見ない」ということが挙げられると上原氏は語った。
「デザイン思考を定着させるためには、『見たいものしか見ない』というバイアスを解くことが重要なカギになる。多様性は重要と言いながら多数決で決めたりするし、専門職を集めて話しても、今までなかったものを生み出すのは難しい。偶然ではなく、狙って『BOXの外を考える』ということだ」(上原氏)
上原氏は、慶應義塾大学大学院のSDM(System Design and Management)で行っているデザインプロジェクトの概要を紹介した。ここでは米MIT(マサチューセッツ工科大学)のシステム思考、米スタンフォード大学のデザイン思考などを組み合わせてプロジェクトを進めているという。
「システム思考は俯瞰的にものを見ることだ。何が目的でものを作るのか、どういう構造で作るのか。例えば新しい遊具を作る場合、人気になって人が集まると収益が出るが、一方で行列ができて人気が落ちる可能性も秘めている。このように思考のトレースを作る必要がある」(上原氏)
デザイン志向について上原氏は、「人を中心にものを考えること」、「多様性を生かすこと」、「自分たちはできるんだという強いマインドを持つこと」、「たくさん失敗して経験から学ぶこと」などが重要だと語った。
デザイン思考の流れは、ユーザーを深く理解し共感する「共感」、特定の問題を定義する「問題定義」、新しいアイデアを生む「創造」、それを作り上げる「プロトタイプ」、そしてそれを「テスト」するという流れになる。
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