上原氏は続いて、SBテクノロジー(旧:ソフトバンク・テクノロジー)とリデンが手がけるオープンイノベーション農業プラットフォーム事業「AGMIRU(アグミル)」について紹介した。
AGMIRUもシステム思考、デザイン思考で生まれたと上原氏は語る。「JAの対抗馬とか電子版JAとか言われるが、そうではない。農業の高齢化が進んでおり、5年前に平均年齢67歳と言われていた。生産人口も減っている。日本の国土の問題で農地が全国地域飛び飛びになっており、生産性を上げようとしても上げられない。すべて問題を解決するのが不可能なので、どういうところを解決できるかを考えて取り組んだ」(上原氏)
最近は精密農業や生産管理などの「スマート農業」が流行しているが、「生育に近いところのソリューションばかりが増えており、言ってみれば『車を作ったがガソリンスタンドがない』状態だ」と上原氏は話す。
「例えばドローンは『作物を撮る』と『薬剤をまく』の大きく2つの使い方があるが、パイロットが必要なケースがあり、その場合はトレーニングも免許も必要になる。撮影して終わりではなく、解析も必要になる。これらを1社ずつがやっているのでつながりもない。場所も違えばつながりも作れていないため、これらをどうやってつないでいくかを考えていかなければならない」(上原氏)
そこで生まれたのがAGMIRUだ。約10社ほどが連携するオープンイノベーション型のプラットフォームとしてスタートしたが、「現在、引き合いは30社を超える」という。
「資材のEC企業、お金を借りるための金融など、ナンバーワン企業にお声がけしてつなぐプラットフォームを作った」(上原氏)
ニュースや天気予報、市場での売価情報などの情報を手軽に入手できるようにし、資材購入では複数の農家による共同購入を可能にした。生産管理の面ではまずタスク管理ができるようにし、プラットフォームで購入した資材の情報を自動的に入力できるようにするなど効率化を図った。ドローン利用についても、パイロット調達や画像解析などをネットでリクエストできるという。
ネットで作物を販売できる仕組みや、保険制度、財務管理サービスを利用した確定申告時の手続きの簡略化など、さまざまな企業と組むことでサービスメニューを広げている。
プラットフォームに加わる各社にとって見ると、共創(協創)にはメリットとデメリットがあると上原氏は語る。
「協業できる部分と競争になる部分はあるが、『ユーザーを作る』ということに各社が共通して問題意識を持っている。ユーザー、つまり農家をシェアしましょうという考え方だ。多数の農家の顧客をシェアできるので、1個1個マーケティングする必要がない。また、各社のサービスが途切れているため、市場を作るという点で協力的になっている」(上原氏)
さらに上原氏は、農家向けのコミュニティサービスを12月にリリースすると発表した。
「農家自体、地域に情報が閉ざされている。コミュニケーションはFacebookでもTwitterでもできるが、(新しいサービスは)キーワードで検索や逆戻り、ソートができるなど、さまざまな情報にアクセスできるコミュニティサービスを考えている」(上原氏)
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