フードテックで飢餓をなくす--スタートアップ支援で2030年のゴールを目指す国連WFP - (page 2)

Justin Jaffe (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2019年10月24日 07時30分

 2030年までに飢餓を根絶するというWFPの意欲的な目標は、大きすぎて全貌の把握が難しい。だが、WFPの支援を受けたスタートアップは、世界最貧国で人々が直面している多面的な問題のひとつひとつを具体化し、現在取り組んでいるテクノロジーやソリューションによってもたらされるはずの非常に有意義な成果を実現できるよう取り組んでいる。

Tamwiniのアプリ画面
Tamwiniは、イラクの食料配給システムのデジタル化を支援するアプリを開発した
提供:Angela Lang/CNET

 大きい使命の前に利益は二の次になっているとはいえ、なかには典型的なスタートアップの事業のようになりつつあるものもある。WFPが開発した資金調達アプリ「ShareTheMeal」は、150万人以上から寄付を集め、4500万食以上をまかなった。WFPは、1ドルの寄付があるごとに、教育、衛生、生産性の向上という観点で10ドル分の利益が見込めると述べている。

「Grain(穀物)ATM」を披露するPiyush Kanal氏
8億5000万人以上のインド国民が補助金による食料配給を受けているが、そうした食料の40%は本来の受給者に渡っていない。Piyush Kanal氏(写真)は、インド国民が適切に食料配給を受けられるよう支援するソリューション「Grain(穀物)ATM」を披露した
提供:Angela Lang/CNET

 一方、従来とはかけ離れた技術やソリューションもある。例えば、MITの学生プロジェクトから生まれた、「Fenik Yuma 60L」クーラーボックスは、電気を使わずに野菜や果物、飲料、乳製品を冷蔵しておける。昔ながらのジーアポット(二重ポット式の冷蔵庫)の現代版とも言え、気化熱を利用して冷却するので水だけあればいい。それでいて、Fenikによると、食べ物の保存期間が3~5倍にのびるという。

 Fenikは、Kickstarterでこのプロジェクトに8万ドル以上を調達した。Yuma 60Lは先進国では150ドル(約1万6000円)で販売されるが、Fenikはその売り上げの一部を、モロッコの恵まれない消費者への資金援助に充てているという。同国では、この技術が既にパイロット運用されている。

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Fenikのポータブル冷蔵庫「Yuma」は電気ではなく水を使って、4人家族の1週間分に足る食料の保存期間を延長する
提供:Angela Lang/CNET

 また、WFPの支援を受けたH2Growは、アルジェリアやチャドなどの「困難な地域」でも食糧を育てられる水耕栽培プラットフォームを開発した。土壌が不要で、同じ規模の従来型農法と比べると、必要な面積が75%、水は90%も少なくて済む。初期投資100ドル(約1万1000円)で、1日あたり10頭のヤギを養えるだけの新鮮な大麦を生産できるという。この技術がなければ、ヤギはゴミを食べて育ち、その乳を飲んだり肉を食べたりした人が毒素など有害な物質を摂取することになる。

 ブロックチェーンを目先の目的に使う一部の企業とは違って、WFPは、暗号技術の現実的な使い方を見いだしたと話す。WFPの「Building Blocks」の取り組みは、ブロックチェーン技術を利用してロジスティクスデータと財務データを管理するプロジェクトで、ヨルダン国内にいる10万人以上のシリア難民に対する食糧支援の提供を支えている。

 Sesi氏が率いるチームは10月18日にガーナに戻り、帰国後も先述の穀類水分計「GrainMate」の開発を続ける予定だ。このプロジェクトが成功すれば、ガーナ国内で貧困線以下の生活を送る700万人近くを救えると期待されている。心ない、自己陶酔的な、あるいは私利私欲に徹した利益の追求に満ちたテクノロジーの世界にあって、同氏の目指すものは疑いの余地なく崇高だ。

 国連が、2030年までに全世界から飢餓を根絶するという目標を達成できるのかどうか、その可能性について問うと、Kowatsch氏はシリコンバレーの企業家によくある楽観的な一面を見せてこう語った。「たどり着けるはずだ」

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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