自社のソフトウェアのおかげで世界で有数の著名企業になったMicrosoftは、5年前からこの瞬間に到達するための準備を進めてきた。
その兆候が現れ始めたのは、Microsoftが人気の高い「Office」ソフトウェア(「Word」「Excel」「PowerPoint」)の無料ダウンロード版をAppleやGoogleのOSを搭載するデバイス向けに発表した2014年のことだ。Microsoftがそうした動きに出たのは、新しい最高経営責任者(CEO)にSatya Nadella氏を任命してまもなくのことだった。Nadella氏は、自社を蝕むことにもなった企業文化を破壊し、Microsoftが重視するすべてのものにWindowsを搭載するという、古い企業理念を捨て去ることに自身のキャリアを捧げた。
Nadella氏は2018年のインタビューで、「ここにいるのは、自分がクールになるためではなく、ほかの人たちにクールになってもらうため。重要なのは結果だ」と語っている。
Microsoftはこの数年間で、特にAndroidに関して、より長足の進歩を遂げた。「Your Phone(スマホ同期)」アプリは、Androidスマートフォンの情報をWindows PCにミラーリングすることで、ユーザーがそれらのデバイス間で写真をドラッグ&ドロップして同期できるようにする。さらに、PCでテキストメッセージに応答できるほか、PCからスマートフォンを制御することも可能だ。
そうした取り組みを進めていたMicrosoftは、数十億ドルでNokiaを買収した1年後の2015年に、その買収には基本的に価値がなかったことを認め、7800人を解雇した。
Nadella氏は当時、「われわれは、単独のスマートフォン事業を成長させる戦略から、自社製のデバイス群を含む力強いWindowsエコシステムを創出し成長させる戦略への移行を進めている」と語っていた。
同氏は、高い評価を得ていたMicrosoftの「Windows Phone」ソフトウェアが実際にはほとんど売れていなかったことには言及しなかった。Windows Phoneは、ペンで操作するポケットコンピューター向けに設計された1996年の「Windows CE」、2000年の「Windows Mobile」に続くタッチスクリーン対応OSとして2010年にリリースされた。
Windows Phoneで、Microsoftは刷新を求め、AppleやGoogleと全く異なるデザインを提供した。例えば、ホーム画面上には、通常、アプリのアイコンが格子状に並べられるが、Microsoftはこのデザインからの脱却を図った。Windows Phoneでは、アプリのアイコンが入ったボックスが採用され、ボックスの画像が上下に動いて、情報の一部(ニュースの見出しなど)が表示されるようになっていた。
Microsoftができなかったのは、アプリ開発者に対して、AppleとGoogleだけでなく、Microsoftのスマートフォン向けにもアプリを構築しようと思わせることだった。
米CNETのAndrew Hoyle記者は2015年、Microsoftの最後のスマートフォンの1つに関するレビュー記事で、「Windows Phoneのアプリの品揃えは依然として非常に限定的だ。筋金入りのWindowsファン(そうなる理由はあるのだろうか)でないのなら、AndroidやiOSを選んだ方がより上質なモバイル体験を享受できるだろう」と述べている。
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