仮想現実(VR)の話を聞くと、体験したことがあるかどうかにかかわらず、テレビゲームのことを思い浮かべる人は多いだろう。はるかかなたの宇宙船や、水中洞窟、架空のダンジョン、そんな世界に連れていってくれる。映画「レディ・プレイヤー1」や、Netflixのドラマシリーズ「ブラック・ミラー」のようなSFの世界だ。どんなものかはご存知だろう。
FacebookでもVRは5年前から開発が進められており、技術は進歩しているものの、ユーザーの関心はそれほど盛り上がっていない。Microsoftの「HoloLens」や、「Magic Leap」のように、現実と仮想を融合する拡張現実(AR)ヘッドセットをFacebookも開発しているという予想や報道がある一方で、同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)のMark Zuckerberg氏は、VRが今もなお有望な道であり、ゲームへの入口以上の価値があると話している。同氏は依然としてFacebookの将来をVRに賭けており、それはちょうど、故Steve Jobs氏が10年前にAppleで「iPhone」に賭けたときのことと似ている。そして、iPhoneは実際、モバイル革命に火を付けることになった。
Zuckerberg氏は、いずれVRが軌道に乗った日には、Facebookこそが業界をリードするのに最もふさわしいと考えているのだ。
「私が常に大切にしているのは、単にテクノロジーだけではない。重要なのは、どうすればテクノロジーを人間にとってもっと自然なものにできるかということで、その大部分は、ほかの人間とどう交わるかにかかっている」。Zuckerberg氏が独占インタビューにこう答えたのは、Facebookの開発者会議「Oculus Connect 6」で、VRの夢を語るステージに立つ2日前のことだった。
「われわれが重視しているのは、人と人とのつながりをつくって、人々をまとめることだ」と語ったZuckerberg氏は、「プレゼンス」(実在感、臨場感)というテーマに傾倒しており、今あるモデルからの飛躍を目指している。「アプリとコンテンツを用意して、ストアからダウンロードすればそれで終わり」というようなモデルではなく、人と人をつなげるものになるべきだというのだ。
競合するヘッドセットやアプリストアを展開する他社に向けたZuckerberg氏の公然たる挑戦は、典型的なシリコンバレーの内部抗争と映るかもしれない。Googleが展開する「Daydream」ヘッドセットプロジェクト、Valveの「Index」ヘッドセット、Microsoftの複合現実、さらにはAppleで進みつつあると言われているVRおよびARの取り組みなど、競合は少なくない。だが、これはFacebookがVRを、そして間もなくARも、真剣に推進しようとしているという兆候でもあるのだ。
Zuckerberg氏が2014年に当時スタートアップだったOculus VRを20億ドルで買収すると発表したとき、ソーシャルメディアの超大手がなぜVRに手を出すのかと、テクノロジー業界は困惑を示した。だが、同氏にとってそれは、ARという未来への橋渡しだったのであり、今もそれは変わっていない。ARがテクノロジー業界における次の大きな変化になると同氏は確信しているからだ。この変化について、Zuckerberg氏は、今ポケットにあるスマートフォンから、コンピューターが作り出す世界に私たちを入り込ませるVRヘッドセットへの移行であり、最終的には、コンピューター画像を現実世界に重ね合わせるARメガネへの移行なのだと説明している。
「これからいったいどこに向かっていくのか、なぜFacebookがVRやARを進めているのか、と疑問に思う人は多い。われわれには、社会的な使命がある。人々が自分の声を上げられるようにして、人々をまとめるということだ。われわれがテクノロジーの観点から進めようとしていることも、テクノロジーの体験の中心に人を据えることだと考えてもらえればいい」(Zuckerberg氏)
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