Facebookが今週、CTRL-labsの買収を発表した。この取引は、ソーシャルメディアの巨人が「心を読むテクノロジー企業」あるいは「ニューラルリストバンド」メーカーを買収したなどと報じられた。実際にはこの取引が意味するところはもっと複雑で、さらに、われわれとテクノロジーの関わり方の大きな転換が始まる兆しである可能性もある。
買収総額は公表されていないが、CNBCは、この取引に詳しい情報筋の話として、5億~10億ドル(約540億~1080億円)と報じた。開発キットをリリースしてからまだ1年もたっていない企業にしては高額に見えるが、Facebookは最先端技術のトップランナーだと評価した企業には躊躇せずに高額な賭けをするのだ。例えば、2014年には仮想現実(VR)企業のOculus Riftを20億ドルで買収した。
では、CTRL-labsの何がFacebookを引きつけたのか?
CTRL-labsは、ブレインコンピューターインターフェース(BCI)あるいはブレインマシンインターフェース(BMI)として知られる技術を手掛ける企業の1社だ。
FacebookでVRおよび拡張現実(AR)担当副社長を務めるAndrew Bosworth氏はFacebookへの投稿に「われわれは、仲間と楽しく過ごすよりも、やりたいことを実現するための技術を獲得するために時間を費やす。デバイスやテクノロジーとやり取りするための、もっと自然で、直感的な方法があるはずだ。その方法を構築したい。そのためにCTRL-labsを買収することにした。同社のチームは、Facebook Reality Labsに加わる。このラボで直感的なやり取りを実現するためのテクノロジーを構築し、早く消費者向け製品に取り入れたい」と書いた。
「この取り組みの目標は、人々が自然な動作の延長のように自分のデバイスを操作できるリストバンドだ」(Bosworth氏)
キーボードからマウスへ、タッチスクリーンから音声へと、テクノロジーは入力の仕組みの変遷による影響を受けてきた。CTRL-labsは、人がテクノロジーとやり取りする次世代の主要な方法がハンズフリー動作になるとみている。
一般に、BCIシステムは脳に埋め込むチップか、頭皮にかぶせる電極付きキャップを使って脳からの信号を集め、それを気分、コミュニケーション、ユーザーが意図した動きに変換する。CTRL-labsは動きへの変換に重点を置いているが、アプローチ方法は競合の多くとは異なる。(脳に直接埋め込むチップを使わない)非侵襲式BCIは一般にデータ収集にEEG(脳波記録)を使うが、CTRL-labsはEMG(筋電図)を採用する。EEGは、脳内の電気信号を測定するが、EMGは脳から発せられ、体内の神経を伝っていく電気信号を測定する。
そして、神経信号を捉えるためにCTRL-labsが使うのは、ヘッドギア型の装置ではなく、神経信号がユーザーの手の筋肉に到達するタイミングでピックアップする、手首に装着するデバイスだ。
CTRL-labsの研究開発責任者、Adam Berenzweig氏は9月、米ZDNetに次のように語った。「腕と手が人間の脳から外の世界への情報伝達パイプだとすれば、われわれ人間が世界のコントロールに影響を与え、大きな変化をもたらす主な方法は、筋肉、特に手の筋肉を動かすことだ。われわれのテクノロジーは、情報を捉え、デコードし、理解し、現在人間がテクノロジーとやり取りするために使っている手段を短縮する」
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス