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音楽家からマーケターに転身--アドビのサービス部門を統括する小沢氏の「宿命」 - (page 2)

藤井涼 (編集部) 山川晶之 (編集部) 阿久津良和2019年10月03日 08時00分
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 両社を買収して、顧客から大きな期待を背負ったと感じています。アドビでは、これまではデジタルエクスペリエンスを重視してきましたが、2019年からCXM(顧客体験管理)を押し出し、カスタマーエクスペリエンスというキーワードに変えました。

 これまでウェブ解析の分析ツールは、データを元にA/BテストやAdobe Campaignで運用支援をしてきましたが、今後は顧客の属性情報や購買情報に行動データを追加して、マーケティング活動を拡大させます。我々は顧客を大切にするために、“行動の動機”を軸にしていますが、タッチポイントを最適化する姿勢はマルケト、マジェントの買収を通じて拡大しています。

 MAツールという観点では、CRM(顧客関係管理)と接続し、顧客のタッチポイントと連携させることで、従来からのマルケトのお客様に対して、より良いサービスや製品の組み合わせを提供できないかと議論しています。

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 たとえば、BtoCでは訴求方法としてクリエイティビティを重視していますが、BtoBでは、いまだにテキストメールやメールマガジンで目にするのは罫線の組み合わせ。これでは心に響きません。我々のBtoBは「人は人からしかものを買わない。心が震える否かのクリエイティビティ」を重視してきました。ここにマルケトが加わることで世界一のサービスになると思います。

——アドビのマーケティング製品は導入コストが高いという声も聞きます。この点についてはどう考えていますか。

 弊社の製品は高いと思われていますが、たとえば高級ブランドを安くしてほしいという声はありません。投資に対して「高い」「安い」の二元論で見れば、競合製品と正しく比較していないからでしょう。

 我々は、顧客が持つ課題の重さや優先順位をうかがって、「実現できるのか」「ビジネスインパクトが大きいか」を正しく判断して伝えなければなりません。ただ、答えは顧客自身がお持ちです。その答えを引き出すのが我々の仕事ですが、これができていなければ高いと感じるのは当然でしょう。アドビ製品を導入することで他社製品の半分で実現できるようになる、または同じ時間で倍の効果を得られる。ここが議論されるポイントです。

 論点とすべきはスピードでしょう。顧客も競合製品も常に変化・進化します。この市場で勝ち抜けるか否かは「スピード」と「広さ」。MVP(Minimum Viable Product:顧客価値と利益を生み出す最小限の製品)というキーワードもありますが、事業側が欲するのはMaximum Viable Productなんです。クリエイティブとデータという観点から見れば、市場にはアドビしか存在しません。

小沢氏がアドビにいる「宿命」

——2019年8月からアドビのサービス部門は小沢さんによる新体制となりました。どのような戦略を考えているのでしょうか。

 シンプルに述べると、販売パートナーさんをより大事にします。お客様への保守スタッフを準備し、パートナー向けトレーニングの提要など、"パートナーファースト"に対応する仕組みを用意します。もちろん"お客様ファースト"の姿勢も維持しますが、やはりパートナーさんのビジネスを成功させるか否かが重要な要素です。

 とあるパートナーさんはコンサルティングビジネスをやられていますが、人員の確保が難しいという場面がありました。そこで、我々のコンサルティング部門から定期的に支払うことで、20名以上の人員を用意し、パートナーさんご自身でプロジェクトを回すまでになりました。弊社ではお客様とパートナーさんの会社に出向いてレビューするスタッフを“エキスパートサービス”と呼んでいますが、着実に案件も増加し、大きな成果につながっています。

——音楽家からマーケターに転身し、いまではアドビのコンサルタントを束ねるまでになりましたが、今後の人生で小沢さんが成し遂げたいことはありますか。

  僕がアドビに在籍し続ける理由とつながりますが、弊社の製品が世界一であることと、日本企業とその製品を世界一にしたいという強い思いがあります。

 たとえば、我々が子どもの頃から、多くの方に親しまれているある国産のドリンクが、成分はそこまで変わらないのに、いまでは海外のドリンクの後塵を拝するようになっています。その理由はスピードなんですよね。その海外企業は、製品自体ではなく、スポーツとコラボレーションすることによるクールなイメージなどを提示し、グローバルに配信してきました。つまり、クリエイティビティで負けているんです。日本の良さを世界に打ち出すのが難しい、または早く取り組みたいという顧客に対して、アドビの製品群と体制が持つ「速さ」「広さ」「クリエイティビティ」を届けられるのは弊社しかありません。そのことを実証したいです。

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 また、日本はDX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れていると言われていますが、生活基盤に限れば世界一だと思っています。Suicaの決済システムは圧倒的に便利ですし、交通機関の到着時刻も正確です。ただ、マーケティング分野では世界一ではありません。そのギャップを感じているからこそ、自らグローバル企業に在籍して、もっと事例やデータを通じて、日本が良いサービスと製品で世界に打ち勝つ状況を作りたい。これは私がアドビにいる宿命だと思っています。

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