「大人と同じ機会を与える」--CA Tech Kidsとアドビが考える次世代クリエイター育成

 子どもたちに「プログラミング」と「デザイン」という2つの武器を渡すーー。そんなコンセプトの次世代クリエイター育成プロジェクトがある。サイバーエージェント子会社のCA Tech Kidsが運営するプログラミングスクール「Tech Kids School」とアドビが実施している「Kids Creators Studio」だ。先日開催された、2期生による「完成作品プロモーション動画発表会」では、子どもたちのクリエイティビティに驚かされる大人たちが続出した。

(左から)CA Tech Kidsの上野朝大氏、Adobeのミチ・アーサー氏、アドビシステムズの小池晴子氏
(左から)CA Tech Kidsの上野朝大氏、Adobeのミチ・アーサー氏、アドビシステムズの小池晴子氏

 発表会を開催したKids Creators Studioと、両社の今後の教育への取り組みについて、CA Tech Kids代表取締役社長の上野朝大氏、AdobeのHead of Campaign Marketing for Education and Sparkであるミチ・アーサー氏、そしてアドビシステムズマーケティング本部 教育市場部 部長の小池晴子氏に話を聞いた。

クリエイティブな小学生に“誰でもなれる”

ーーまず、Kids Creators Studioを立ち上げた理由を教えてください。

上野氏 : プロダクトを作るためには、プログラミングとデザインの両方が必要です。私たちもプログラミングだけ教えていればよいとは思っていませんでした。しかし、デザインを教える機会もないし、自分たちだけで教えるのはパワーがいります。2年半くらい前からそういった課題感を持っていたところ、アドビからお声がけいただいたのがきっかけです。

ーー実社会では、プログラミングとデザインを分業しているケースが多いと思います。どちらも教えることに懸念はありませんでしたか。

上野氏 : 子どもたちから、デザインを学びたいという声が出てきたんです。ゲームを作れるようになったけれど、フリー素材で作っているから見た目が変わらない。でも、作るスキルが僕にはないと。子どもは分業で何か作ろうという発想ではないので、教えないわけにはいかないと思いました。どちらも教えてみたところ、デザイナーに向いている子、プログラマー気質の子など、個性があるなと感じました。

 プログラマー気質の子がデザイナーになりたいと言い出すことはないと思いますが、両方学んだことでデザインのことを考慮できるエンジニアになっていくのだと想像できます。そういうハイブリッドが大事だと考えています。

ーーKids Creators Studioの2期生である4人は、約800人いるTech Kids Schoolから選抜されています。あの4人には特別な才能があったのでしょうか。

上野氏 : 選抜された4人は、プログラミング能力という意味では相対的に高いのですが、それは習熟度合いの問題で、誰でも3〜4年学習すれば、あの4人のようになります。早く学んでいるので、早く進んでいるだけのことです。もちろん一人ひとり個性がありますし、キラッと光るセンスみたいなものもありますので、全員があのようになるかといえば当然そうではありません。今後は、あらゆる子をあのように育てていくための仕組みを用意していかなければならないと思っています。

完成作品プロモーション動画発表会で登壇した4人。左から、大嶺結葉さん、岡村有沙さん、宮城采生さん、澁谷知希さん
完成作品プロモーション動画発表会で登壇した4人。左から、大嶺結葉さん、岡村有沙さん、宮城采生さん、澁谷知希さん

小池氏 : アドビも同じ考えです。特別な子どもたちが4人いたということではなく、彼らがこれからの社会を支えていくので、その課題解決の力を一人でも多くの子どもたちが身につけて活躍してほしいなと思っています。環境を整備すれば子どもたちはどんどん伸びます。今回の4人はそのロールモデルとして考えています。

大人と同じ環境を与えて蓋をしないことが重要

ーーKids Creator's Studioでは、IllustratorやPhotoshop、Premiere Rush、Adobe XDなど、実際に大人が現場で使っているアドビ製品を使ったと聞きました。

上野氏 : 我々は子どものために用意されたデザインツールを使わせる考えはありません。プログラミングも同じで、子ども向けプログラミング教材を最初の1年は使いますが、子どもだからこの程度でいいだろうと判断してしまうと、可能性をふさいでしまうと考えています。最初はオーバースペックかもしれませんが、大人と同じ機会を与えようというのは、我々の一貫したコンセプトです。

小池氏 : 今回はプロモーションビデオを作るということで、Premiere Rushを使うところからスタートしました。エントリーレベルで使いやすいツールなので、子どもたちに最適だろうと考えたのですが、結局4人のうち2人はPremiere Rushでは物足りなくなって、Premiere Proという映像向けツールを使っています。それは歓迎すべきことです。社会で実際に使われているツールだからこそ、子どもがやりたいと思ったことに蓋をすることはなくなるのです。

上野氏 : 私はままごとが嫌いでして、それはままごとには意味がないと考えているからです。ままごとをやらせるなら、料理をやらせればいいのです。ただ、いきなり料理をさせても包丁で手を切ってしまうので、包丁の使い方はレクチャーが必要です。しかし、ままごとから学べることと、料理を作って学べることは全然違うはずです。

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