動画広告市場が、引き続き活況である。今日は、動画広告の効果指標と、音あり・なしでの広告表示について取り上げてみたい。
2018年に2027億円に達した動画広告費は、デジタル広告費の14%を占め、今後も著しい成長が見込まれる。そして、この動画広告費をデバイス別で見ると、76.1%がモバイルである(出典:電通、CCI、D2C調べ)。
動画広告拡大の背景には、AbemaTV、TVerなど動画メディアの成長、YouTubeやInstagram Storiesなどの動画SNSに加えて、動画共有アプリのTikTokが若い世代からの支持を伸ばしていることが挙げられる。
そして、動画専門メディア以外の媒体社にとっても、増大する動画広告費は魅力的であるため、インプレッション単価の高い動画広告の導入を進め、収益拡大を図ろうとする動きが加速していることも動画市場拡大の一因である。
数年前に比べると、動画広告の出稿先、つまり広告在庫は大幅に拡大し、広告主のキャンペーン目的に応じたメディア選択の幅、最適化の余地も大きく広がったと言える。
国内外の動画広告の効果測定指標を見ていこう。動画キャンペーン実施時に、重視されるポイントとして、HAVOCがある。Human, Audible, Viewable on Competionの頭文字を表しているが、(機械ではなく)人による視聴であり、音ありの状態で、動画視聴を完了するまでビューアブルな状態、を意味している。ちなみに、ビューアブルとは、実際にユーザが閲覧できる状態を指す。
動画広告特有の「Audible (音あり)」の是非については、業界内に様々な意見があるが、米国の団体であるCoallision for Better Ads (CBA)は、自動再生型の動画広告はサウンドオフ(音なし)での掲載を推奨している。
CBAは、IAB(Interactive Advertising Bureau)、WFA(World Federation of Advertisers)、ANA(Association of National Advertisers)などの団体、P&Gやユニ・リーバなど広告主企業、Google、Facebook、Microsoftなどのプラットフォーム、News CorpやWashinton Postなどのメディアを含む40の企業や団体がメンバーとして活動している。
CBAは、オンライン広告のユーザ体験を改善するための世界基準「Better Ads Standards」として、ユーザが不快に思う12の広告表示スタイルを定めているが、「音あり」の自動再生型動画広告は、この一つに該当する。
ユーザを不快にさせる広告は、アドブロックの導入を促進する結果を導くため、グーグルは、CBAが定める「Better Ads Standards」に準拠していないウェブ広告をChromeブラウザでブロックする機能を本年7月から世界中に広げることを発表した。
同様に、他の主要ブラウザ各社も、「音あり」の自動再生動画広告を表示しているパブリッシャーサイトを表示しない決定をしている。
では、サウンドオフの動画広告掲載が普及していく環境下、広告主はどう対応するのだろうか。
ユーザに多くを期待する広告主としては、音なし設定の動画を音ありに変更して視聴してもらい、さらにCTA(call to action)を求めたいところかもしれないが、これはなかなかハードルの高いことであろう。一歩進んだ広告主は、音無しの動画広告フォーマットに合わせてクリエイティブに工夫を凝らし、CTAを高めるべく、編集手法や字幕の最適化に努め始めている。
その一方で、TV CMと動画広告を同じように位置付け、ウェブ動画広告に音ありを求める広告主企業は今も存在する。このような企業は、音ありで再生された広告視聴回数を重要なKPIとしている。
前述の通り、日本では動画広告の76.1%がモバイルで消費されていることを鑑みると、ユーザが不快に思っていないか気になるところである。
ユーザ視点で言うならば、現代はユーザがSpotifyやSoundcoudで音楽を聴きながらウェブブラウズするマルチリスニング時代であることを忘れてはならないと思う。
今後、サウンドオフの動画広告がどの程度普及していくのか、動画広告評価指標からAudible(音あり)が姿を消すのか。Facebookで視聴される動画コンテンツの85%が音無しであることを鑑みると、業界で音無し動画広告を普及させていくのはFacebookかもしれないが、今後の動画市場のさらなる拡大と共に、音あり・なしの問題がどう発展していくか、注目したいところである。
この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。
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