サービシンクは、不動産に特化したユーザー体験が設計できるシステム開発会社だ。街の不動産会社から、大手仲介、管理会社まで、100を超えるウェブサイトの制作を手掛けている。その一方で、不動産業界特化型チャットアプリ「アトリク(Atlicu)」やサイト内ヒアリングツール「Teach(ティーチ)」といった自社開発サービスも展開。不動産業界✕ウェブサービスの事業で培ったノウハウをいかし、不動産業界のIT化を推進する。
率いるのは、1996年からウェブ制作業を始め、現在不動産に特化したウェブ制作・システム開発を手掛ける名村晋治氏。すでに20年以上のキャリアを持つ名村氏に、アトリクが生まれた背景や不動産業界におけるウェブの役割などについて聞いた。
――すでに20年以上のキャリアを持つサービシンクですが、会社設立のきっかけは。
ウェブ制作を始めたのは1996年からですが、不動産業界のITには2000年から携わっています。不動産ポータルサイトを展開していたネクスト(現LIFULL)に勤めたのがきっかけでした。実際に携わって見ると、不動産領域でのIT導入は「物件のお問い合わせ」までしかできていないと感じ、その先にもITを入れたいと思っていました。
その後、ネクストが不動産のポータルサイトへ成長を遂げるタイミングで私が携わっていたウェブ制作事業が縮小され、私自身は不動産に強いウェブ制作会社に転職しました。そこを経て設立したのがサービシンクになります。
――ウェブ制作以外に業務支援ツールも開発されていますね。
1990年代を経て2000年の頃になるとメールの普及が進み、不動産会社でもメールによる営業が出始めていたのですが、実際に営業担当者に話しを聞くと「あまり使いたくない」という返答があったんですね。今まで通り、電話や直接お会いする営業のままでいいと感じている方が多かったんです。
電話や来店など、直接お客様とお話しする機会があれば、いわゆる「口説く」営業ができます。ですが、メールだとそうはいかない。また、お会いした時にお客様との距離を縮められても、メールになるとそこまでくだけた文章でのやりとりという訳にもいかず、せっかく縮まった距離が元に戻ってしまうという課題もありました。
また、お客様に一生懸命作ったメールを送っても、読んでいるのか読んでいないのかもわからず、メール営業自体を不毛だと感じてしまう傾向にありました。そうした課題を解決するために作ったのがチャットツールのアトリクになります。
――メールがチャットに代わるとどんな変化が起こるのでしょう。
LINEなどのチャットツールを日常的に使っていた20~30代が賃貸物件を借りるターゲットに入ってくるタイミングだったので、使い勝手の面からのハードルはないだろうと思いました。
さらに、お客様は電話によって時間を拘束されるのは嫌、長いメールは読まないということがわかってきました。しかし不動産会社側としては、お客様との接点を確保したい。そこで、チャットなら良いのではないかと思いました。
アトリクの裏コンセプトは「ちょうどいい」なんです。電話ほど拘束されず、メールほど長い文章を読まなくてもいい。メールだとあまりにもくだけた文章は不快に感じられるお客様もいらっしゃいますが、チャットでは「いつもお世話になっております」という定型文で始まるほうが不自然です。
電話ではできたけれど、メールではできなかった営業を実現するツール、それがアトリクが提供できる「ちょうどいい」なんです。
――実際導入された会社の反応は。
導入前に比べ確実に成約率が上がった、他決されることが減ったという声を多くいただいています。チャットのため早く反応でき負荷を上げず接点頻度が増え、お客様をつなぎ止められることが最大の要因だと思っています。電話とは違い証跡も残せるため、お客様とのやりとりを明確に追えるのもメリットだと考えています。
また、お客様とのやり取りの進捗管理機能もつけているので、社内、部内での進捗報告・進捗共有もとても簡単です。
――お客様にアプリをダウンロードしてもらうのは難しいのではないでしょうか。
開始当初は敬遠するお客様がいらっしゃったことも事実です。でも逆にLINEでつながるよりいいですよね、と店頭では言っていただいています。アトリクをスタートする前に、社内の女性スタッフにLINEで不動産の営業をされるのはどうかと聞いたことありました。私自身はLINEでつながっても、嫌であればブロックすればいいと思っていたのですが、「つながること自体が嫌」だと(笑)。
アトリクにももちろんブロック機能をつけていますし、削除された時点でお客様へのご連絡はできなくなってしまいます。また、営業担当者とお客様のやりとりは、上司は全て確認できますので、「ブロックされた」事実もわかります。何よりコンプライアンス遵守のためにやり取りは店舗側では全部オープンになるようにしていますので、お客様にも安心感を持っていただけています。
営業担当者はPCのウェブブラウザからも操作ができますので、複数のお客様とのやりとりも可能です。細かなやりとりも、すぐに対応できますから、お客様との接点回数も自然と増えます。それが信頼につながり、コミュニケーションでお客様との関係性を向上させていきます。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス